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アライグマの恩返し
第二章

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 二人は雄だとわかったアライグマをリトルハンドと名付けた、そうして犬とも仲良くなった彼を大事に育てたが。  
 娘と母は彼を見つつ話した。
「野生に帰すわ」
「生まれがそうだから」
「ええ、それでいいわよね」
「いいと思うわ、この子にとってもね」
 母は娘の考えに頷いた。
「その方がね」
「野生の生まれだからね」
「それじゃあね」
「そのことを前提に育てていきましょう」
 こう話して実際にだった。
 二人はリトルハンドを野生に帰すことを前提として育てていった、そして。
 成長すると実際に野生に帰した、後は彼の幸せを願ったが。
 暫く経ってだ、二人でシャロを散歩に連れて行って家に着くと。
「ワンワン」
「キィ」
「あれっ、リトルハンド」
「まさか」
 二人は家の玄関にいるアライグマを見てすぐにわかった、その毛並みも仕草もまさにリトルハンドであった。
「うちに来たの」
「戻ってきたの」
「キィ」
 そうだという風に鳴いてだった。
 彼はシャロと遊びはじめた、家にいる様に。そして夜になるまでそうしてから何処かへと去って行ったが。
 それからも時々家に来て遊んだ、娘はその様子を見て母に帰った。
「うちはあの子にとって実家ね」
「それでなのね」
「時々ね」
「うちに帰って顔を見せてくれるのね」
「育ててくれたから」
 だからだというのだ。
「顔を見せて」
「それを恩返しにしているのかしら」
「そうかもね、そう思うとね」
 娘は笑顔で話した。
「嬉しいわね」
「そうね、確かにね」
 母も笑顔で応えた、そして時々の彼の里帰りを喜んだ。
 その彼女が仕事でロシアのロストナ=ナ=ドヌに来た時にだ。
 案内された動物病院に一匹のアライグマがいた、そのアライグマは。 
 動物病院の中を歩き回り入院中の動物達のところに来てそっと寄り添ったり優しい目を向けたり前足で摩ったりしてだ。
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