第四幕その九
[8]前話 [2]次話
「まさに名犬だよ」
「そうだね」
「先生も言われましたけれど名犬の中の名犬です」
そこまでの域だというのです。
「僕も思います」
「そうだね」
「それならご家族が何か言う前に」
「何かして欲しいことを察してね」
「動いてくれますね」
「小さいから重いものは持てないけれど」
ティーカッププードルだからです、この種類の犬は本当に小さいので重いものを持てる筈がないのです。
「それでも小さいもの軽いものはね」
「お口に咥えてですね」
「持って来てくれるよ」
「そうですね」
「そして芸もね」
「教えたら」
「それで覚えてね」
そうしてというのです。
「披露するよ」
「そのことも人気が出ますね」
「だからね」
それでというのです。
「ネットで評判になるよ」
「可愛くて頭がよくて優しい犬として」
「絶対にね」
そうなるというのです。
「だから僕も今からね」
「あの娘の動画を観るのが楽しみですね」
「そうなんだ」
ご飯を食べつつ答えました。
「僕もね」
「そうですか」
「そう、そしてね」
さらに言う先生でした。
「あの娘は今はご飯もミルクもね」
「美味しくですね」
「頂いているよ、ブラッシングもね」
これもというのです。
「ちゃんとだよ」
「してもらっていますね、確かに毛も整っていますし」
「奇麗になっているね」
「はい」
実際にというのです。
「画像を観てもわかります」
「けれどね」
「前のご家族からはですね」
「自分達の子供が出来たら」
「それで子供を家に入れたその日から」
「ケージに一日中入れられてだよ」
そうした状況に置かれてというのです。
「ブラッシングはなくなってね」
「無視されてですね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「散歩もなし、遊ぶこともね」
「なしですね」
「そんな状況に置かれていて保健所に捨てられたから」
「それじゃあ毛もですね」
「酷いことになっていたと思うよ」
こうトミーにお話しました、お味噌汁を飲みながら。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「プードル系の子は巻き毛だから」
「ブラッシングは絶対ですね」
「お散歩もでね」
「さもないと毛が絡まりますし」
「ゴミも付くからね」
だからだというのです。
「不衛生だよ」
「そうしたことも考えない飼い主だったんですね」
「だからおもちゃなんだよ」
「新しいおもちゃに夢中になって相手にしなくなったんですね」
「結局はそうだよ」
「つくづく酷いですね」
「本当にね、保健所は暗くて寒くて寂しい場所だよ」
先生はこのことは俯いて言いました。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ