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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
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「あややが気になってたのは、この日本刀なんだけど……。如月くんは、御先祖様が代々と伝えてきた刀だって言ってたのだ。たぶん、如月くんの御先祖様、かなり偉い人だと思うのだ」
「へぇ……、どうしてそう思ったの? 見ただけで分かるものなんだね」
「知識がある人なら誰でも分かっちゃうのだ! 少なくとも如月くんの御先祖様っていうのは、今で言うところの……うーん、政府の高官レベルはあるのだ。当時で言えば、蔵人頭とか?」


文は人差し指を口元に当てて考える仕草をしながらも、的確な答えを示してきた。確かに安倍晴明は、現在で言うところの政府高官に相応する地位にいた。左京権太夫という、つまりは行政機関の長官をした経歴もある。しかしそれが、どうして刀を見ただけで分かるのだろうか──。
彼女はそうした自分の考えを見澄ましているかのように微笑すると、説明を続けてくれる。


「実は、刀の持ち主の地位っていうのは、鞘を見れば分かるのだ。如月くんの刀の鞘は、ほら──黒塗りの漆に、上から銀粉が綺麗に撒かれてるでしょ? 沃懸地(いかけじ)っていう手法なんだけど、こういう鞘を持てるのは、当時で言う従四位……えっと、政府高官レベルの貴族だけって決まってるのだ! だから、如月くんの御先祖様は貴族だったってことになるのだ!」


思わず感嘆してしまった。ただの装飾だと思っていた鞘に、そんな意味合いがあったとは。
アリアも「凄いわね……」と言葉を洩らしながら、銀沃懸地の鞘を覗き込んでいる。改めて見てみると、確かに綺麗は綺麗だ。初見の感想もそんなもので、まさかこうした装飾に、格式を意味するような工作があるとは、微塵も思っていなかったのだ。御先祖様は知っていたのだろうか。


「よく分かるねぇ……流石は装備科の俊才さんだ。もしかすると、この刀の持ち主だった御先祖様が誰だったかとか、そういうのも分かっちゃうの? 流石にそこまでは難しいのかな」
「……如月くん、もしかして、あややのことを試してるのだ?」
「ふふっ、ごめんね。まぁ、試してないと言ったら、嘘になるけどさ……」


「むー……」とわざとらしく頬を膨らませてから、文は快活に笑った。


「あははっ、まぁ、分からないわけじゃないのだ。刀の成分分析をさせてもらったんだけど、その含有量から見る限り、平安中期の刀ですのだ。玉鋼の原料になる鉄や砂鉄が主成分で、たたら製鉄の技術が確立された頃かな……? 何度も打ち直されてるっぽいけど、基盤は同じなのだ。保存状態もかなり良いし、現役でも使えるくらいだから、キチンと丁寧に研いでおいたのだ!」


「……本当なら、国宝級の代物だけど」と、彼女は苦笑する。「そんなに凄いものを平然と使ってるのね……」と呟くアリアに、自分もつられて苦笑した。確かに、それもそうだ
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