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俺様勇者と武闘家日記
第2部
テドン
船室にて
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 私は静かにドアノブを回す。 ところが、鍵がかかっているのか、扉は開かなかった。
 仕方なく、昼に料理長が行ったように食事を扉の前に置き、再び食堂に戻ることにした。
「お帰りなさい。 ユウリさんの様子はどうでした? 」
 料理長が心配した様子で声をかけてきたが、私は曖昧な表情を作る。
「それが鍵がかかっていて……。 まだ元気になってないのかも」
「それは心配ですね。 一旦船酔いすると、なかなか治りませんし」
 そういうものなのか。 何かに酔うということが今までなかったので、どの程度辛いのか良くわかってなかったのだが、何時間も辛いままなのは相当体に負担がかかるだろう。
「早く上陸できるところが見つかればいいんですけどね」
 最悪町がなくてもいい。 船が停泊できるような場所であれば、一度船から降りてそこで休めばいい。 魔物も蔓延っているかもしれないが、もしものときに買っておいた魔物避けの聖水もあるし、なんとかなるだろう。
 まあこればっかりはこっちではどうにもできないので、ただ神様に祈るしかない。
「そうだ、何なら先に夕食でも召し上がりますか?  もうしばらく待っていただければ用意できますので」
「ホントですか!?  是非お願いします! 」
 料理長の心遣いに素直に感謝しつつ、カウンター席に座り待つことにした。
 ほどなくして、あたりにいい香りが立ち込めて来たと同時に、料理が運ばれてきた。
「今日は海が荒れてまして、あまりいい魚は釣れなかったんですよね」
 そういうが、料理長の作る料理はどれもとても美味しい。今回は塩味の効いた保存用の魚をオリーブ油で焼いたものと、乾パンにべーコンを挟んで焼いたサンドイッチ。その横には、レーズンと調味料であえたマッシュポテトが添えられている。
 これまで五日間船での食事を頂いてきたが、メニューはそれぞれ違っていた。 食材は同じでも調理法や味付けを変えたりしてくれてるので、食事に飽きると言うことは今のところ感じられなかった。 皆が飽きないように、色々工夫をしてくれているのが感じ取れる。
「ミオさんの食べる姿をみると、作りがいがありますね」
 カウンターの向かいに立っている料理長が、柔らかな笑みを浮かべるので、つられて私もつい、にへらっ、と笑顔で返す。
 確かに食べることは好きだが、これは誉められているのだろうか?
 あっという間に食べ終えると、一気に満腹感と幸福感が増した。 しばらくそこで寛いでいると、食堂の入り口から足音が聞こえてきた。 反射的に振り向くと、そこにはいつもの旅装束を身に纏ったユウリが、食べ終わった食器を持ってこちらに向かって歩いてくるではないか。
「おい、ボケ女。 行くぞ」
「え? どこに? 」
 私の至って普通の反応に、ユウリは明らかな侮蔑の表情を向けた。 いや
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