第2部
テドン
船室にて
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俺は部屋で休むから、あとはお前に任せる」
そういうと、顔を上げずに甲板を出て行った。 その様子をヒックスさんが心配そうに眺める。
「ユウリさん、どうしたんでしょう? 具合が悪いように見えましたが……」
「えっと、実は、船酔いしてるみたいで……」
私が説明すると、ヒックスさんは物凄く驚いた顔をした。
「なんと、それは大変! ならなるべく長時間停泊できる場所を探して参ります! 」
ヒックスさんは慌てて船長室に駆け込んだ。おそらく中にいる航海士さんに相談しに行ったようだ。 ヒックスさんのことだ、きっと急いで探してくれるはずだろう。
その間に私も船内に入り、ユウリの部屋に戻ってみる。すると、部屋の前で心配そうにこちらを待つ料理長の姿があった。
「あの、勇者さんは大丈夫なんでしょうか? 」
船員の中でも最も年長らしいその人は、コックとしても何十年勤めてきた大ベテランではあるが、優しく穏やかな性格だからなのか、わざわざ様子を見に来てくれたようだ。
「ええ、なんとか。 それであの……、もし可能でしたら、消化のいい食べ物を用意してくれませんか? 」
「はい、もちろん! すぐ用意致します! 」
張りのある返事と共に、弾くように厨房へ向かう料理長。 年のわりにすごくシャキッとした人だ。
ノックをし、再び部屋に入ると、今度は布団を頭から被っていた。 ベッドの横のテーブルに置いてあったレモン水には、どうやら手をつけていないようだ。
「お水、飲まないの? 」
「…… いちいち余計なことをするな。 ボケ女」
「余計なことじゃないよ。 こんなに具合が悪いんだもん。 心配になるよ。 ねえ、本当に船酔いなの? 」
「…… だったらなんだ」
「お水飲めば、少しはすっきりすると思うよ。 起きられる?」
「……」
私の少し強引な看護に、抵抗する気も失せたのか、無言で起き上がるユウリ。
鬱陶しげに見るが、私がお水の入ったコップを手にしたとたん、ぎょっと目を見開いた。
「なんでお前がそれを持つんだ?! 」
「え、いや、今から飲んでもらおうと……」
「そのくらい一人で出来る!! 老人扱いするな!! 」
そう言うと、私の手から強引にコップを奪い、一気に中身を飲み干したではないか。
「えーっ!! 貴重なお水なのに!! 」
「うるさい! 俺に構うな!! 」
顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らすユウリ。それを見て、もしや熱でもあるんじゃないかと思った私は、彼の顔を覗き込んだ。
「なっ……!? 」
「なんか顔が赤いよ? 熱あるんじゃない?」
こんなところで具合が悪くなったら大変だ。そう思い、どれだけ熱があるか確かめようと、自分の額をユウリの額にくっつけようとしたのだが、寸前で思い切り突き飛ばされた。
「おっ、お前は……!
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