第2部
テドン
船室にて
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にとって水は何より貴重なので、料理長には詳しく事情を説明しないと分けてもらえない。そう思っていかに納得してもらえるか言葉を考えながら厨房へと向かったのだが、勇者の体調不良と聞いて心配してくれた料理長は、拒否するどころか普通の水にレモン汁を加えたものをわざわざ出してくれた。
料理長に感謝の言葉を言い残したあと、コップに入った水を手に持ちながら急いで部屋に戻るが、なぜかそこにユウリはいなかった。 辺りを見回すが、人の気配すらない。
外に出たのかと思い、甲板に出てみる。すると、船首の方に服だけ着替えたユウリと、ヒックスさんがなにやら難しい顔をして話しているではないか。
「何かあったの? 」
「ああ、ミオさん。 ちょうどよかった。 今ユウリさんとも話したんですが、どうもこの先には行けないようです」
二人が視線を進行方向へ向ける。 私もそれに倣うと、ここから数キロほど離れた先に、雪をかぶった山々が連なっているのが見える。 道理で寒いはずだ。 しかも上を見上げてみると、ここでも雪がちらついている。
「もしかして、あれがネクロゴンド山脈? 」
「はい。 私もここまで来るのは初めてなのですが、まさかこんなことになってるとは……」
どういうことなんだろう? と首をかしげながら目の前の景色をじっと見る。 そして、あっと気が付いた。
「何あれ……? 火山? 」
海はそこで行き止まりになっており、海岸を経てすぐに山脈が広がっている。 だが、その山脈の一番高い山のてっぺんからは噴煙が上がっており、つい先ほど噴火が起こったのか、噴火口の周りには、鮮やかに赤く光るマグマが伝い流れている。
ここからでもわかる。 これ以上近づくのは危険だ。
よく見ると、降っているのは雪ではなく、火山灰だ。 風が強いわけでもないのに、ここまで飛んできているということは、相当大規模な噴火なのだろう。
「ここ数年で、地形がだいぶ変わったみたいですね。バングの言った通りだ」
「……あの火山がある限り、俺たちはここから先には進めないようだな」
三人の間に、暗雲が立ち込める。まるで、鬱々とした今の天気のように。
「仕方ない。 それならほかのルートを探し、同時進行で六つのオーブの行方も探すことにする。 とりあえず、情報を集めるために近くの町にでも泊めてくれ」
「それなんですが、ユウリさん、このあたりには、人が住める家や町は見当たりません」
「……なんだって? 」
「一応『鷹の目』を持つ船員の一人にこのあたりの町の場所を調べさせたんですが、どこも昔、魔王軍に滅ぼされたり、一斉に逃げ出して無人となった町しかなくて……」
「……」
ショックを受けたのか、船酔いが悪化したのか、沈黙するユウリ。 だがすぐに我に返り、
「なら、とりあえず一度停泊できるところを探してくれ。
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