第2部
テドン
船室にて
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
船での生活を送ること五日。
灯台を離れ、左舷に見える山脈や森林を眺めながら、どんどん南下して行く私たち。
やがて大陸に沿うように航路をとると、途中から北上するようになった。 東にはバハラタの町がある大陸まで見えるようになり、どうやらここは二つの大陸の間に挟まれた湾のような地形になっている。
途中まで順風満帆だった船旅だったが、北上するにつれて次第に波は荒れ始め、風も強くなってきた。
海の天気は変わりやすいというけれど、このあたりの海域は特に海が荒れやすい、とヒックスさんは言う。
ずっと客室にいても退屈なので、時折甲板や船長室に行っては手伝いを申し出たが、勇者の仲間ということで気を使われているらしく、丁重に断られていた。
なのでこの五日間、波が穏やかな日は一人で黙々とトレーニングをしたり、ユウリに再び海の魔物講座を受けさせられたりしていたのだが、空に暗雲が垂れ込める今の時間は、高波もあり船体が大きく揺れることがままあるため、仕方なく客室でおとなしく待つことにしている。
食堂で船内のコックさんに作ってもらった朝食をぺろりと平らげ、満足になった私は、そのまま自分の部屋に戻り、ベッドに体を預ける。
一人でぼんやり考え事をしているうちに、そういえば今日は朝からユウリの姿を見ていないということに気づき、隣のユウリの部屋を訪ねてみることにした。
「ねえ、ユウリ。 起きてる?」
ノックをして声をかけるが、返事はない。 どこかに出かけているのかと思い、一応扉を開けて部屋の中ものぞいてみる。 すると、ベッドにくるまり、頭だけ出して寝ているユウリの姿があった。
「ど、どうしたの!? 」
私が慌てて駆け寄るが、いつものユウリらしい毒舌は降ってこなかった。 それどころか、私が部屋の中に入っても、何も反応がない。
ベッドに近づいてみると、顔面蒼白のユウリが布団に半分顔を出したまま、私を恨めしそうに見ていた。
「朝からうるさい……。 さっさと出てけ……」
いやいや、そう言われて、はいそうですかって出ていけるわけないじゃん!!
そのただならぬ様子に、私は既視感を感じていた。 そういえば、前にもこんなことがあった。
確かあれは、いざないの洞くつで旅の扉を通った時だ。 ナギに落とされてロマリアに着いたとき、こんなふうに青白い顔をしていた。 そして、ひとつの結論に辿り着く。
「…… もしかして、船に酔ったの? 」
私の言葉に、びくりと反応するユウリ。 無言だが、どうやら図星らしい。
そう、確かあのあと、旅の扉に酔ったとか言っていた。 きっと今も同じような状況なのだろう。
「ちょっと待ってて、今お水持ってくる! 」
私は返事も待たず部屋を飛び出し、大急ぎで厨房からお水をもらってくることにした。だが船の上
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ