誘惑
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真っ直ぐと紗夜を捉えていた。
「ッ!」
紗夜はフェンスから離れ、スイムスイムから逃げ去る。
だが、去り際にスイムスイムの体が金属網のフェンスを通過するのを見て、目がさらに大きく見開かれる。
「何で……!?」
道中の障害物、全てが簡単にすり抜けられる。さらに、地面の下に潜ったり、全く疲れを知らない表情の相手に、ただの人間である紗夜が逃げられる道理などない。
「やっつければ……命を奪えば、お姫様になれる……!」
彼女の言葉の意味は分からない。
ただ紗夜は、それが必要だと本能的に察知した。
懐に収納していた、白い、日本刀のような形のアイテム。それを掴むと同時に、スク水の少女の刃が紗夜を襲う。
慌てて身を曲げて、スイムスイムから逃れる紗夜。
「こ、来ないで!」
震える手で、白いアイテムをスイムスイムに向けた。
だが、目を細めるスイムスイム。直立のまま、彼女は紗夜を見つめていた。
「これを……」
これまでココアが二回、これを使った。
それは、鞘から刀を抜くような動作だった。
同じように、紗夜は鞘から持ち手を引き抜こうとする。だが、接着されたようなそれは、紗夜の力ではびくともしなかった。
「そんな……どうして……?」
動かない。その事実に、紗夜の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「保登さんが使った時は、あんなにあっさりと動いたのに、どうして私には使えないの!?」
だが、紗夜の声に答える者はいない。ただの大理石で作られたようなそれは、ただ無情にその宝石で紗夜を見返していた。
「どうして……! どうして……っ!」
どれだけ祈っても、呪っても、それは動かない。
それどころか、スイムスイムは、すでに目と鼻の先に迫ってきていた。
「……」
もう、言葉も発することさえできない。
手から零れ落ちた白いアイテムが、乾いた音をたてる。
「ルーラ。そしてマスター。……これで、お姫様に」
スイムスイムの声が、どこか遠くに聞こえる。
振り下ろされる刃物。それは、紗夜の頭を迷いなく割ろうと___
「危ない!」
する前に、革ジャンの男がスイムスイムへ肩をぶつけた。
目の前から危機が去った。それを理解するのに数刻遅れた。
「紗夜さん、大丈夫!?」
その声に、ようやく紗夜は息を吐きだした。
見れば、ハルトがスイムスイムを突き飛ばし、共に転がったところだった。
「松菜さん……!?」
「間に合ってよかった……!」
起き上がったハルトが、安堵したように息を吐く。
「どうしてここに?」
「出前がこの辺でよかったよ……紗夜さん、気付かなかった?」
ハルトがそういうと同時
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