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銀河で夢を
第四章

[8]前話
「思える作品の一つです」
「そうですか」
「はい、ですが」
「ですが?」
「いえ、あの作品を読むと宮沢賢治はより多くの作品を残して欲しかったです」
「そういえば」  
 ソガモも八条の今の言葉にはっとなって応えた。
「宮沢賢治は若くして亡くなっていますね」
「はい」
 そうだというのだ。
「結核で」
「そうでしたね」
「今は結核もですね」
「治りますし死ぬ人もです」
「いないですね」
「そう思いますと」
 非常にというのだ。
「残念です」
「左様ですね」
「まことに」
「より多くの作品を残して欲しかった」
「それは思いますね」
「銀河鉄道の夜も」 
 今話しているこの作品もというのだ。
「決定稿をです」
「残して欲しかったですね」
「そう思います、ですが全ては二十世紀のこと」
 この世紀の前半のことだというのだ。
「ですから」
「言っても仕方ないですね」
「むしろ二十世紀の前半にこの様な作品を残してくれた」
「このことにですね」
「素直に賞賛の気持ちを抱きます」
 こう言うのだった、そしてだった。
 八条は今度はこう言った。
「そして宮沢賢治は一生独身でしたが私も」
「もてないというのですね」
「ですから」
「それはないです」
 スガモは今度ははっきりした笑顔で言えた。
「長官でしたら」
「結婚出来ますか」
「必ず。いい人とお会い出来て」
「そうしてですか」
「結婚されて」
 そしてというのだ。
「幸せな家庭を築かれます」
「だといいですが」
「はい、それは必ずで」
 スガモはこのことは笑って話した、そしてだった。
 宇宙に旅に出た時はいつも銀河鉄道の夜を思い出す様になった、すると宇宙の旅がこれまでより遥かに楽しいものになった。


銀河で夢を   完


                 2021・3・15
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