第六章
[8]前話
交際は高校を卒業し二人が大学を出てからも続き。
やがて結婚し夏織は撫一の家に入ったが既に結婚し子供もいる匠一郎は妻となり母となった妹のそちらの評判を聞いて言った。
「いい奥さんでか」
「家元の奥さんでな」
「それでお母さんとしてもよ」
両親は息子に笑顔で話した。
「いいってね」
「評判なんだな」
「そうなのよ」
「意外だな」
匠一郎、もう中年になっている彼は腕を組んで言った。服の上からではわからないが実は腹に脂肪がついてきている。
「あいつがいい奥さんんあってな」
「いいお母さんになってっていうの」
「ああ、本当にな」
こう母に言った。
「まさかな」
「だから家事はちゃんと出来ていて性格だって悪くなかっただろ」
不思議がる息子に父が言った。
「だからだ」
「それでか」
「ああ、夏織もな」
彼女もというのだ。
「悪い娘じゃなかったからな」
「撫一君と交際出来て結婚出来てか」
「そしてだよ」
「いい奥さん、いいお母さんになったんだな」
「書道家、茶道や華道の家元の家でもな」
「あんな雅でもか」
匠一郎はそれが不思議だった、だが。
その彼に撫一も話した、彼は外見は学生時代とあまりというか全く変わっていない。ただし夏織は少し太ったのは内緒だ。
「夏織さんは芯がとても奇麗で手先も動く人なので」
「茶道も華道もなんだな」
「家元の家の奥さんとしてもです」
「大丈夫か」
「書道でも」
夏織は今では五段になっている。
「最初からです」
「いい字だったんだな」
「勇壮で野性味のある」
「それで奇麗なか」
「芯が」
書に出ているそれがというのだ。
「だからです」
「そっちの家でもやっていけてか」
「最初に私も好きになりました」
「野性味ばかりでも芯が奇麗ならいいか」
「はい、一番大事なものは芯です」
撫一は匠一郎に微笑んで答えた。
「やはり」
「そういうことなんだな」
「夏織さんはいい奥さんでいいお母さんです」
「芯が奇麗だからか」
「全ては」
「そうなんだな、俺もやっとわかったよ」
匠一郎は笑って述べた。
「あいつはどうして幸せになれて今もそうなのかもな」
「芯ですね」
「ああ、芯だよ」
まさにそれだと答えた、そうしてだった。
以後妹についてあれこれ言うことはしなくなった、ただありのままの彼女を見て笑顔になるだけだった。その笑顔はとても優しく暖かいものだった。
ワイルド系 完
2021・2・14
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