第三章
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「そうするか?」
「高校を卒業したら」
「大学に行ってもな」
兎に角社会に出たらというのだ。
「どうだ」
「とはいっても私自衛隊には興味ないし」
「じゃあ山のヘルパーか」
「それいいかも。森林保護とか」
「本当にそっち系に行きたいんだな」
「駄目かしら」
「ヤクザ屋さんとか麻薬の密売人じゃなかったらいいさ」
犯罪に関わる仕事でないと、というのだ。
「俺もな。けれど本当に女の子らしくないな」
「可憐とかおしとやかとか」
「恰好もな」
ティーシャツに膝までのズボンという夏の恰好だ、しかしそこに色気などというものは全くなかった。ラフというしかなかった。それは仕草や雰囲気からそうなっていた
「そうだしな」
「そうなのね」
「ああ、それで本当にな」
「彼氏出来るか」
「俺は甚だ疑問だよ、相当ワイルドな奴でないとな」
そうした男性でないと、というのだ。
「無理だろうな」
「そうした人もいるわよね」
「いてもどうだろうな」
人の好みはそれぞれでそうした人でも果たして夏織を好きになるかとも思ったのだ、だがある日のこと。
夏織は家に黒髪をショートにし細面で目は細く色白で背は一七〇位で華奢な身体の少年を連れてきた。黒の詰襟は夏織が通っている高校の制服だった。
彼は奇麗な声で名乗った。
「山坂撫一といいます」
「まさかと思うけれどな」
両親もいる場で匠一郎は彼に問うた。
「あんた夏織の」
「はい、交際させてもらっています」
「そのまさかが事実か」
匠一郎は唖然として言った。
「凄いな」
「そうでしょうか」
「ああ、あんた夏織と同じ高校か」
「同じ学年です」
「制服見たらと思ったらな」
「はい、部活は華道部と茶道部そして書道部でして」
「全部文科系だな」
匠一郎は撫一の言葉も受けて言った。
「それも雅な」
「家が書道家の家で華道や茶道の家元でもありまして」
それでとだ、撫一も答えた。
「部活もです」
「そうか、嘘みたいだな」
「嘘ですか」
「あんたみたいな人がな」
雅な文化の中にいる人がというのだ。
「こんなな」
「夏織さんのことですか」
「ああ、ガサツで全然女の子らしくないな」
「いえ、夏織さんは素敵な人です」
「嘘だろ」
「実は授業で夏織さんが書かれたものを見て」
書道のそれをというのだ。
「そして文化祭のイベントで茶道や華道も参加されたましたが」
「全然女の子らしくなかっただろ」
「おおらかでかつ勇壮なもので」
「やっぱり女の子らしくないな」
「僕はそこに真のお心を観たのです」
「真の?」
「はい、飾らずそして奇麗な」
そうしたというのだ。
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