第三章
[8]前話
「そして城の中で柿を食しようぞ」
「それでは」
こうしてだった、正之は江戸城に戻り。
そこで柿を食しつつ彼に話した。
「タンコロリンは食われなかった柿の実のあやかしであるな」
「そう言われました」
「だからこうしてな」
「その持っている柿を全て食するとですか」
「姿を消す」
「そうなのですか」
「それ故にな」
正之は柿を食いながらさらに言った。
「これよりだ」
「柿を食うのですな」
「そうしようぞ」
「わかりました、春に柿ですか」
「旬ではないが」
「それでもですな」
「こうした時はよかろう、ではだ」
正之はここでその者だけでなく周りに言った。
「お主達もな」
「食ってよいですか」
「柿を」
「そうしてよいですか」
「遠慮はいらぬ」
周りに微笑んで話した。
「皆で食おう、かなりの数じゃ。わしだけでは食いきれぬ」
「だからですな」
「我等もですな」
「柿を食ってよいのですな」
「皆で食おう。そして食ってな」
そうしてというのだ。
「あやかしの無念を晴らそう」
「柿を食ってそれであやかしが成仏するなら」
供をした彼も言った。
「それでよいですな」
「そうであろう、ではな」
「これよりですな」
「柿を全て食うぞ」
「わかり申した」
こう話してだった。
正之と周りの者は柿を食った、そして全て食い終えた。
以後タンコロリンが江戸の街に出ることはなかった、江戸の街が拓けてようやく街として栄えはじめた頃の話である。以後江戸で柿の実を残す者はいなかったという。
タンコロリン 完
2021・3・13
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