第十三章 思い出したくない!
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力のない声で言葉を続ける。
「正香ちゃんのことも救いたい、って、ウメちゃん、そういっていたくせに……」
「せやから、状況が変わったからゆうとるやろ。なんべんもいわすなや。脳味噌がアホなんか」
応芽は、ふふんと鼻で笑った。
「なにが……なにが、どう変わったというの?」
アサキは、ぼそり小さな声で尋ねる。
なにがどうであろうとも、正香ちゃんの尊厳を傷付けていいことにはならないけど。
でも、抱えていることがあるのなら、それを知りたい。
もちろん、ウメちゃんだって、本心からそんなことをいったわけじゃない。そんなことは分かっている。
いえないというのなら、なんでもいいから、こうして言葉を引っ張り出すしかない。
「あたしはもともとな、お前らの誰かを超ヴァイスタにしてやるつもりで、潜り込むため転校の話を受けたんや。妹を救うためにな」
「え……」
驚きつつも、あまりショックではなかった。
ここでこうして向き合っているうち、無意識に色々なことを想定していたのだろう。
聞きたくなかった言葉であることには、違いはなかったが。
「でもな……誰も死なせることなく、雲音のことも助けてやる、方法を見つけてやる、と、そう思うようにもなっていった。お前らとバカなことしとるうちに、仲間として、かけがえのないものになっていたからな。って、これは前に話したはずやな」
「聞いた」
アサキは小さく頷いた。
超ヴァイスタ云々は初耳だけど、「お前らがどうなろうとも、かなえたい夢がある」とは聞かされていたことだ。
「そのために、メンシュヴェルトの情報も得ようとしたって」
「せやな。それは祥子に邪魔されて、失敗したんやけどな」
嘉嶋祥子、リヒトの魔法使いである。
銀黒の髪、銀黒魔道着の、少女だ。
「でも何故なんかな、理由は分からへんのやけど、その後あっさりと樋口のおっちゃんが見せてくれたんや。祥子を人払いして、あたしにだけな。なにを知ったか、知りたいか?」
数秒の後、アサキは頷いた。
正直、あまり興味はない。メンシュヴェルトやリヒトの極秘情報など。
でも、自分と応芽とのやりとりは、ここで自分が頷かないと進まないと思ったから。
「臨床結果からの魔法係数、ヴァイスタやザーヴェラーが出現する時の、結界に対する波動曲線。その他の研究データ、そこからくる考察などの記録。……あたしも幹部の娘で、小学生の頃から組織におったから、それを理解する最低限度の知識はあった。そして知ったんや。やはり、新世界に行くしか雲音を助けられない。超ヴァイスタを作るしか、そこへ行く術はないと」
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