第二章
[8]前話
「妙だな」
「ヤマネコでないし」
「もう標高一二〇〇位だけれど」
「こんなところにいるんだ」
「この子は」
ヤプチンスキーはその猫を見て言った、見れば。
結構汚れていて痩せている、それでだった。
これまで山で遭ってきたり話を聞いた猫とは違うと直感で感じた、それで同行している夫婦に対して言った。
「この子は遭難してますね」
「この山に」
「そうですか」
「多分誰かの飼い猫です」
首輪をしていることも確認した。
「ですから」
「保護して」
「それで、ですか」
「助けましょう」
こう言ってだった。
ヤプチンスキーはその猫を保護して山を登り頂上まで行って降りた、そして麓の街の動物の保護センターに事情を話して猫を預けると。
センターのスタッフはすぐにある人に連絡を入れた、すると黒髪で緑の目の初老の女性が飛んで来て言ってきた。
「オミー、見付かったのね!」
「ニャア!」
オミーと呼ばれた猫はその人の胸に飛び込んだ、そうして抱き締め合い。
女性はヤプチンスキーとローラ夫婦に深々と頭を下げてから去った、その後で彼は猫の話を聞いてポーランドで友人に話した。
「家出をしてなんだ」
「山に彷徨い込んだのか」
「それであの山は登山者が多いから」
だからだというのだ。
「人について四日程山にいて」
「それでか」
「その間三回位登頂していたらしいな」
「誰も保護しなかったのか、その間」
「皆ヤマネコと思っていたみたいだな」
「首輪していたのにな」
「そこは運がなかったな、けれど僕が保護して」
そしてとだ、ヤプチンスキーは話した。
「助けたから」
「それでだね」
「あの子も助かったよ、あと雄だったらしいね」
「そうだったんだ」
「いや、猫も山にいるんだね」
ヤプチンスキーはこうも言った。
「そのことがわかったよ」
「君は山で猫に結構会うね」
「それでわかったよ」
「遊びに来ていたり遭難していたり」
「そこは色々だけれどね、けれど山にもいるね」
猫はというのだ、こう言ってだった。
彼は次の登山の用意に入った、今度も山で猫に会うかどうかわからなかったがそれはそれでいいと思いながらそれに入ったのだった。
高山の猫 完
2021・7・24
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