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俺様勇者と武闘家日記
第2部
テドン
新たなる旅路
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いることである程度ストレスを抑えることができたけど、今は話し相手もいない。一人で抱え込むのが苦手な私には、これからの旅が精神面においてとてつもなく辛くなることは、間違いないだろう。
「おい。船旅の準備だ。食料は船に積み込んであると言っていたから、俺たちの分の携帯食料と薬草類、道具類を買いに行くぞ」
「はーい」
 半ば投げやりな態度で返事をする私。その態度が気に入らないのか、唐突に私の髪の毛を引っ張るユウリ。
「痛い痛い痛い!!」
「わかったならさっさと動け!! このバカ女!!」
 そう怒鳴ると、手を放してさっさと先に行ってしまった。
 ああもう、これじゃあまだ旅に出て最初のころのほうがよかったよ。早く二人に会いたい。そう思わずにいられなかった。



 一通り道具を買いそろえ、再び波止場に戻ってくると、すでに桟橋の前でヒックスさんが待っていた。
 出航の旨を伝えると、ヒックスさんは船員に合図を送り私たちを船内へと案内した。
 甲板には数人の船員があわただしく作業を行っている。やがて、錨が引き揚げられ、出航の合図とともに船が動き出した。
「うわあっ!! すごい!! 動いてる!!」
「そりゃ船なんだから動くにきまってるだろ」
 身も蓋もないことを言うユウリを横目に、私は船から見える景色に心を躍らせた。
 まず目に飛び込んだのは、果てしなく広がる水平線。見上げると、いくつもの大きな雲が潮風とともに沖の方へと流されていく。鼻腔をくすぐる潮の香りに、私は今大海原の上にいるのだと実感させられた。
 さらに波の音とともに船がゆっくりと動き出したかと思うと、私は人目もはばからず一人で騒ぎ出していた。
「ミオさんは、船に乗るのは初めてですか?」
 ヒックスさんに声をかけられ、はっと我にかえる私。船員たちがこちらを見て笑っているのを見て、途端に羞恥心が襲ってくる。
「船どころか、こんな広い海を見るのも初めてだったんです。ごめんなさい、はしゃいじゃって」
「いえいえ、ミオさんみたいに素直に喜んでくれる人を見るのは久しぶりなもので。こちらとしてもそんな風に船に乗っていただけて、嬉しいですよ」
 私の幼稚な行動を、ヒックスさんは穏やかに笑ってフォローしてくれる。なんて優しいんだろう。
「船長はああ言っているが、あんまり騒ぎすぎるな。物見遊山で乗ってるわけじゃないんだぞ」
「う……。ごめんなさい」
 それに引き換え、うちの勇者は相変わらず身内に厳しい。いや、今のは私も悪いんだろうけどさ。
「まあまあ。それより、あちらを見てください。あそこにあるのが、例の灯台です。ほんの一時間ほどで着くと思いますので、それまで客室でお待ちになっていただけますか」
「ああ」
「ありがとうございます」
「では、私は船長室へ戻ります」
 ヒックスさ
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