第2部
テドン
新たなる旅路
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に伝えてください」
風貌のわりに丁寧な物腰で話すヒックスさんは、船員の紹介の後、長い船旅でのルール、座礁したときの対処法、もしものときの舵の取り方などを乗船前に教えてくれた。ユウリも腰の低いヒックスさんが気に入ったのか、珍しく素直に話に耳を傾けている。
そして、一通り話が済んだ後、先に船員たちを乗船させ、出航の準備をした。
「お二人とも、準備ができ次第、お声がけください。十分後であれば出航できますので」
「わかった。さすが船舶業の盛んな国だけあって、仕事が早いな」
「いえいえ、勇者様のお役に立ちたい一心でやらせていただいてるだけですので。何しろ我々船乗りは、一度は海の魔物に痛い目に遭ってきましたから、憎い魔物を倒してくださる勇者様は我々にとっての唯一の希望なのです」
「そうか。俺たちも、海のことは無知に近いが、魔物に関しては安心して任せてもらいたい。お前たちが無事に航海出来るよう最大限のサポートはしていくつもりだ。それと、俺のことはユウリでいい。こいつを含めほかの仲間も、変に謙ったりしなくていいからな。むしろほかの船員と同等に扱っても構わん」
「お心遣いありがとうございます。では僭越ながらユウリさんと呼ばせていただきます」
まあいい、と一言漏らすと、ユウリは警戒しながら周囲を見回した。
「ところで一つ聞きたい。魔王の城に行くには船しか通れない場所があると聞く。何か知っているか?」
「はあ……。さすがの私も魔王の城の行き先までは全く……。あ、それなら、ここからすぐのところに灯台があるのですが、そこの灯台守に話を伺ってはいかがでしょう? あいつは口は悪いですが、昔は名を馳せた船乗りでした。世界中の海を股に掛けた彼なら、知っているかもしれません」
「そうか。ならさっそくそこへ案内してくれ。俺たちは準備のため一旦離れる」
「かしこまりました。では、私の方は準備がありますので、これで失礼します」
そういって深々とお辞儀をすると、ヒックスさんは船員に向き直り、先ほどとは打って変わった口調で船員たちに指示を出す。船員たちは、船長の覇気に気圧されながらも、威勢のいい返事とともにすぐさま各自配置についた。
「船長が有能だと、船員もよく動くな」
ぽつりと、ユウリが賛辞を口にする。そして、私の方をちらっと見ると、なぜかため息をつかれた。
「不思議だな。万能な勇者の仲間なら、多少は俺の役に立つのだと思うんだが、なぜこうもうまくいかないんだ?」
「そんなの知らないよ! 真面目な顔でそんなこと言われても困るんだけど」
彼の一言に憤慨するが、言った張本人は本当に理解できないのか、私の言葉に耳を傾けることすらせず、ずっと考え込んでいる。
はぁ。やっぱりナギとシーラがいないと、なんだか息苦しい。今まではユウリに何か言われても、ナギかシーラが
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