コンプレックス
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「さあ、可奈美ちゃん! ここはお姉ちゃんに任せなさい! 優勝は私たちだよ!」
「悪いけど、みんな私の言うこと聞いてもらうことになるからね! 真司さん、私に漕がせて!」
「るんって来たああああああ! 負けないよ!」
「最速で! 最短で! 真っすぐに! 一直線に!」
「響さん……かっこいいです……このまま勝って、ココアさんにお姉さんと呼ばせましょう」
各々がそれぞれに勇猛果敢な叫びをする中、ハルトは「それじゃあ……」とオールを持った。
「俺たちも、ちょっと頑張ってみようか」
「そうですね」
ハルトの言葉に返す紗夜だが、彼女の目はハルトを見ていない。
気まずい雰囲気を感じながら、ハルトはオールを漕ぎだした。
それぞれのボートが、ティッピーの号令で出航する。最初はそれぞれ、同じペースで水面を滑っていたが、やがてその速度の均衡に乱れが生じてくる。
「私についてきてごらん!」
そう言って、トップを独走するモカ、可奈美チーム。可奈美が漕ぐのかと思いきや、モカが笑顔のまま、猛烈な勢いでオールを漕いでいた。
パン屋だから、腕力が強いのだろうか。
「ああっ! 可奈美ちゃんが連れ去られる!」
「おおおお、落ち着いて! ココアちゃん、それよりしっかりバランスとって! 落ちる落ちる!」
勝手に鬼気迫る表情でふんばるココアが、悲鳴を上げる真司を無視しながら爆進する。
「響さん……こういうのも、とても楽しいです。勝負もいいですけど……今は、こうしていたいです」
「チノちゃん、なんか体勢がすごいことに……」
その次。響は急いでいるが、何よりもチノがそれをさせてくれない。彼女は響の腰に寝込み、響に膝枕ならぬ腰枕をさせている。チノの「ココアさんに膝枕されるよりも、とっても安心します」という一言に、ココアが水平線の彼方で悲鳴を上げていた。
その次が、ハルト、紗夜。
当初こそは、「皆にどんな罰ゲームをさせようかな」と息巻いていたが、ココアとモカの姉妹対決が中々にヒートアップした結果、後方に取り残されてしまったのだ。
そして。
「るんって来たあああああああああ!」
「日菜ちゃん速い速い速い!」
突如、そんな声が聞こえてきた。
見れば背後には、白目で悲鳴を上げている友奈の姿があった。常に堂々としている彼女が
驚きのあまりに普段見ないような顔になっており、ハルトは思わず笑ってしまいそうになった。
そして、日菜はどんどん早くなり、「あ、お姉ちゃん! 私が勝ったら、るんっとすることやろうね!」と紗夜へ言い残し、そのまま先頭集団に躍り出た。
「ま、まさか、妹さん、いきなり猛スピードになるなんてね」
「スタートから今まで、練習したのでしょう。少しの飲み込みで誰よりも上手
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