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私は、9月になって、インターシップと言う形で、カンコー水産に1週間研修に来ていた。とりあえず、工場の実習で、各職場を回っていた。職場の人達は、ぶっきらぼうだったけど、丁寧に教えてくれていた。特に、工場長の中村さんは、一番年上ということなのだが、最初、怖くて、見てろと言うだけで、まともに質問も出来なかった。だけど、最終の日、何か聞きたいことあるかと、色々と教えてくれた。
こっちへ来る前、及川さんが、カンコー水産の製品をもっと売り込めとみんなにハッパ掛けているということを聞いていた。私は、誠一郎さんに
「私は、父とか藤沢のおじさんの後押しがあったから、雇ってくれたんでしょうか?」と聞いてみた。
「そんなことは無いよ 少なくとも、僕は、最初にあった時から、この子は素直で良いじゃないかと思った。父がダメと言っても、採用してもらうつもりだった。なかなか、面接で自分のことをどん臭いんですと言う子はいないよ。それに、実際この1週間、工場のみんなが明るくて、素直な良い子だと言っているよ」
「そうなんですか 私 この会社に入れるようになって、とても、うれしいです」
「そう言ってもらえると、こっちも期待持てるよ 頑張ってね あと、言わないでもいいことだけど、藤や商店の取引が増えてきているんだ。余計な気を使っているんだね。よっぼど、君のことが気になっているみたいだ。いずれ、わかることだから、言っておいた方がいいかな」
「結局 私 誰かに助けてもらわないと、何にもできないんですね」
「真面目なんだね でも、それは、違う 君はそれだけ性格良いからだ それに応えるんだったら、仕事で頑張ってくれれば良いんだよ」
「ありがとうございます 誠一郎さんの言葉って、いつもステキです。勇気づけられます」
「そうか それは、良かった 僕も、君のそんなとこ好きだよ 君みたいな娘が、惚れた男って、どんな人だろうね 詳しいことは、知らないんだけど、そのうち、ゆっくり聞かせてもらおうかな」
「そうですね 私の人生を変えて、奪っていく人 素敵ですよ」
「君は、女の鏡みたいな人だね なかなか居ないよ ドラマみたいだ」
そんなこと、以前、慎二も言っていたなと思いだしていた。会社を離れる時、工場長の中村さんが顔を見せて、握手を求めてきて
「春には必ず戻ってきなさいよ」と、言ってくれた。あの何にもしゃべらない人が。ここに来て、二人目だ、ごっつい手。
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