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幻想甲虫録
ひねくれ少女と救世主クワガタ
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方、とある家にある虫籠の中にクワガタが入れられていた。
漆黒に染まった体、前翅に走る赤い禍々しいライン、黄色い目。そのクワガタの名は『オズワルド』、アルケスツヤクワガタだった。


オズワルド「…………」


オズワルドは虫籠の中、無言で太陽を見上げながらあることを考えていた。その時間は長くは持たない。突然ドアがバタンと強く開かれた。


夫?「やいオズワルド!!何いつまで寝てんだコラッ!!」

オズワルド「俺は寝てなどいない。ただ少し俺を支えてくれた奴らのことを考えていただけだ」


虫籠のふたが乱暴に開かれる。オズワルドは巨大な手で捕まれると、そのまま壁に思いきり叩きつけられた。


オズワルド「ッ……!」

夫?「嘘つきクワガタが!」

妻?「あなたやめて!虫にまで暴力振るうなんて…!」

夫?「離せ!!誰のおかげであのクワガタを手に入れたと思ってんだ!!テメェのそのうるさい口も縫い合わせんぞクソアマ!!」


オズワルドを拾ったといわれる夫らしき男は妻らしき女に平手打ちした。


オズワルド(………さすが推測した通りだ。こいつは人間ではない、ただの凶暴なケダモノ………)


妻に暴力を振るう夫を冷ややかな目で見つめ、さらに夫の様子をうかがってみる。


オズワルド(このケダモノには子供もいるみたいだが……俺と妻にどころかそいつにまで暴力……毎日酒を煽り、人を殺してでも酒代を稼ぎ………悪いが時を見て見限らせてもらう。なぜならお前は………『歩く粗大ゴミ』だ)


様子をうかがっていたオズワルドだったが、夫の目線が再びオズワルドへ。夫はオズワルドにヅカヅカ近寄ると、そのまま鷲づかみする。


夫「おい嘘つきクワガタ、さっさと行くぞ!!」

オズワルド「『行く』とはどこに?」

夫「俺が飲む酒の金を稼ぐんだろうが!!忘れたとは言わさんぞ!!」

オズワルド「となるとまた殺人か………歩く粗大ゴミめ」ボソッ

夫「あ゛?」

オズワルド「お前が気にすることではない。それよりも酒代か?また俺を殺人兵器としてこき使うのか」

夫「グダグダ言ってるとハチミツが入ったツボに入れて酒のつまみにするぞコラ!!」


夫はオズワルドを鷲づかみにしたまま家を出た。
無力な妻は黙ってそれを見ることしかできず、やがてワッと泣き崩れた。
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