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鹿はお友達
第一章

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               鹿はお友達
 アメリカヴァージニア州在住のステファニー=ブラウンはこの時息子のドミニクを連れてシュナンドー国立公園に来ていた、そこでログハウスを借りて自然と触れて楽しんでいた。夫のピエールはこの時はノルウェーに長期出張で二人だけだった。
 それでだ、二人で自然を楽しんでいたが帰る日の朝のことだった。
「お母さん、バンビが来たよ」
「バンビ?」
 母は四歳の息子の言葉に首を傾げさせた、黒く腰までの豊かな髪の毛で目は青くやや面長の顔で長身だ。息子は父親譲りの茶色の髪で緑の目だ。しかし父親の様に大柄ではない。まだ四歳で成長中であるのだ。
「童話の?」
「うん、来たよ」
 朝の散歩の後で玄関マットで靴の泥を落としながら言ってきた。
「ここにね」
「ここにって」
 バンビというと童話の子鹿かと思った、絵本の話でもしているかと思ったが。
 何とだ、息子がいる玄関のところにだ。
 子鹿がいた、そして息子とじゃれ合っていたのだ。母はその光景を見て驚いてすぐに息子に問うた。
「ドミニク、その子どうしたの?」
「お友達になったんだ」
「ヒン」
 息子は自分の頬を舐める鹿の頭を撫でつつ答えた。
「ここに来てね」
「何時の間に」
「ここに来た最初の日にお外にいて持っていたシリアルあげたらね
「お友達になったの」
「そうなんだ、けれど今日で帰るんだよね」
「そうよ、だからね」
「バンビともお別れだね」
 息子は母の言葉に残念そうに応えた。
「けれど仕方ないね」
「また縁があったら会えるわよ」
「お友達だからだね」
「ええ、だからバンビにさよならを言ってね」
「そうしてだね」
「帰りましょう」
「うん、わかったよ」 
 息子は母の言葉に笑顔で頷いた、そしてだった。
 バンビに笑顔で手を振ってまた会おうねと言って別れた、バンビもその彼を暫くじっと見てから森に帰った。
 その頃夫はノルウェーにいた、この国のアウルランドで仕事をしていたがその中でだ。
 民家の窓のところにトナカイがいるのを見て目を丸くさせて言った。
「あのトナカイは」
「ああ、あの子はフリッペンっていうんだ」
 現地で一緒に仕事をしている人が言ってきた。
「雄でね」
「また大きいね」
「それであの家に住んでるメッテ=カヴァムさんに懐いてるんだ」
「野生のトナカイがかい?」
「そうなんだ」 
 こう彼に話した。
「実はね」
「それはまた珍しいね」
「野生の生きものが人に懐くなんてだね」
「うん、凄くね」 
 こう言うのだった。
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