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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(7)〜タバル・ヒルの戦い(中)〜
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ング男爵が喉を鳴らして笑う。
「いやぁしかし、驚きましたわ。准将閣下は戦友を撃つ覚悟でこちらに来たというのに味方を殺す覚悟もないとは!!いやはや叛徒は相変わらず身内に甘いようで」

 リューネブルクは何も言わずに背を向ける。静かに目を閉じ、”接舷男爵”の笑い声を意識から追い出そうとする。だが外の吹雪の音は気密された指揮壕の中では聞こえず男爵の笑い声は彼の耳にまとわりつくだけであった。



 男爵一人を討ち取ったキチジ・ヒル――側道は鉄火場の真っ最中である。
「よーし、まだ、まだ、まだ……」

「よし防音用意!伏せェ!」
「……」
 空気が波打ち、兵士たちは伏せている地面に押し付けられた。

 圧縮空気を封じ込めた“アンチゼッフル・バブル”を爆破し、ゼッフル粒子を一時的に吹き飛ばしたのだ。原始的であるがそれ故に間違いはない。コロニー艦隊国家アスターテ連邦の海兵隊は接舷戦闘に特化している、つまりはゼッフル粒子対策に特化した研究を行なっているのだ。

「急げぇ!撃ち方用意ィ!」
「……ッ!」
 ふらふらと立ち上がった兵達が圧縮空気式迫撃砲を引き起こし、放つ。

 着弾地点から弧を描くように爆発が起きる。濃度が薄かろうとゼッフル粒子への引火は馬鹿にならない。 だがそれを予想していたのだろうか、敵は既に退きはじめていた。

 ならば楽をできるかといえばそんなことはない、重火力により陣地を叩かれつつ敵が肉薄を試みる、それだけで将兵は万全を期していようと死傷者が発生するし、なにより疲弊する、火器管制を担当する将校の負担は何をいわんやである。

「ご無事ですか」
 クレーベルの補佐をしている大夏軍独立大隊”武徳”の大隊長が駆け寄ってきた。
「なんのなんの、ウチの兵達はまだまだへばりませんよ」
 
「しかし、消耗はします。小手先で凌げるのは限界ですな」
 
「なぁに小手先の手段ならまだいくらでもありますとも!ですがどうも、精彩に欠けるどころかモノクロな指揮ぶりじゃありません?」
 とクレーベル中佐と言いながら飴を噛み潰している。
「休憩なさるなら予定を早めてタンクベッドに入っていただいても」
 友軍の大隊長の言葉にクレーベルは違いますよう、と手を振る。
「いやいやいや、私じゃなくて向こうです、向こう!いい加減な撹乱砲撃、やる気のない突撃、ちょっと押せばすぐ退く――」

 生真面目な大夏軍人はふむん、と思考を巡らせる。
「典型的な波状攻撃では?それに敵が正規軍ではなく諸侯軍というのなら士気が低いのも織り込むべきかと」

「”士気が低いから”ではなく統制された後退ですよ、追撃をする気になれませんね、それにーー」
 クレーベルが眉を顰める。
「なんにしてもあからさまにいい加
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