クイッククイックスロー
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のだろう。
そんな自己嫌悪に陥りながらも、紗夜は続ける。
「私はそんなことないよ? ココアは末っ子だけど、私にも兄が二人いるし。何でも真似して、色んな影響を受けちゃったみたい」
「何でも真似して……」
紗夜は、胸の内がぞわりと感じた。
「それ、辛くないんですか?」
「え?」
「姉だからって、何でも期待されるの。それを、妹が簡単に飛び越えたとしたら、辛くないですか?」
こんなことを、モカに言って、自分は何を望んでいるのだろう。
そんなことさえ、脳裏に過ぎる。
だが、一度口にした言葉は、もう止まらなかった。
「何でもかんでも真似をすると、こっちも辟易するというか……」
「でもね」
モカはほほ笑んだ。
「そんな妹も、可愛いと思わない?」
「え?」
モカがにっこりした笑顔を向けてくる。
「貴女にも、妹がいるんだね? でもさ、そういう劣等感を感じるってことは、お互いに高め合っていけるってことだと思うし、悪いことじゃないよ?」
「……」
紗夜は口を噤んだ。
それを納得したと受け取ったのか、モカは紗夜の肩を叩いた。
「たまには、お姉ちゃんって垣根なんてなく、妹に頼ったりするのもいいと思うよ? 追いかけてくるココアだって、いつかこれなら、私よりも上手いかもって思うこともあったからね」
「そうですか」
もはや、モカの言葉など聞こえてこなかった。
ただ、紗夜の目には、ここにはいない双子の妹の姿しかなかった。
そして、その口からは恨み言だけが綴られていた。
「お姉ちゃんだからなんだって言うのよ……!」
「結構買ったな……」
近くのコンビニで大きなペットボトルの飲み物を買い終え、ハルトは財布の中で小銭を弄んでいた。
「ま、コーラとポカリと……適当に二、三本ずつ買ったからいいよね」
『コネクト プリーズ』
さらに、普段からよく使う魔法で、魔法陣を開ける。可奈美のすぐそばに通じるように念じ、ペットボトルが入った袋を魔法陣に放る。これで、ピクニックのところにペットボトルが置かれるはずだ。
役目を終え、合流しようとしたところ。
ハルトは、その目の前の人物に足を止めた。
「クイッククイックスロークイッククイックスロー」
「社交ダンス……だよね?」
日傘を刺した男性が、通路の真ん中で踊っていた。
口ずさむステップと、周囲の迷惑も考えないまま踊り続ける男性。左右を白と黒で別れた服を着ており、跳ねた髪形も合わさって、ピエロという印象を抱かせる。
「あ、あの人そういえば……」
モカを迎えに見滝原駅へ向かった時。ハルトを越える大道芸の腕を見せたのだ。その後も、モカとこの公園に来た時、一度
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