わしのために争わないで〜
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ていた。
少し磨こう。
「どっちがチノちゃん好みのパンを焼けるか勝負だよ!」
「ココアが作れる程度のもちもちパンで私に挑む気?」
コン、と木製の物がぶつかる音がする。
見れば、姉妹が麺棒でそれぞれに激突させていた。
背後に炎でも燃やせば、格闘戦のタイトルみたいだなと思いながら、ハルトはチノが慌てるのも眺めていた。
「わ……私のために二人が……」
「わしのために争わないで〜!」
チノとは違う声まで聞こえてきた。
いつもチノと過ごしていると、常日頃彼女の上に乗るアンゴラウサギのティッピーが喋っているように思ってしまう。チノ曰く腹話術らしいのだが、大道芸としてある程度の腹話術を覚えているハルトは、それが本当に腹話術なのか常に疑っている。
さらに、姉妹の決闘内容が取り決められていく。
「三キロの小麦粉から自由にパンを作る。それでどう?」
「望むところだよ!」
「三キロ!?」
「ダメじゃ!」
「三キロって……!?」
ハルトは思わず顔を上げる。
「二人とも、三キロって意味分かってる?」
だが、彼女たちはもはやハルトの言葉など耳に入っていない。
三姉妹は、すでに無駄にドラマチックに、チノを巡っての戦いを始めていた。
どうやら材料から何を使うかから競っているようだった。
「姉より優れた妹がいるってことを証明して見せるよ!」
「出来るかな? ココアに、そんな大それたこと」
「……俺、今日の当番なんだけどなあ……」
開幕のゴングが鳴り、白熱してしまった状況に、ハルトはただ一人、置いて行かれたのだった。
「それで……」
可奈美は茫然としながら言った。
「食べきれなくなって、皆でピクニックなんだね」
一月という寒い時期、見滝原公園の芝生。動かなければ冷え込むような環境下で、ラビットハウスの面々はいた。
ピンクのレジャーシートを広げ、座るハルト、モカ、ココア、チノ。可奈美は靴を脱ぎながら、シートに上がった。
「うん。本当は千夜ちゃんとシャロちゃんも誘ったんだけど、二人とも今日は仕事で来れないって言われちゃって」
「ラビットハウスが今日お休みでよかったね。ハルトさんから公園から動かないでって言われたときは何事かと思ったけど、そういうことなんだね」
可奈美は腰を下ろしながら、スマホを見せた。
朝のジョギングの最中、ハルトから送られたメッセージに『今まだ見滝原公園にいる? 悪いけど、そのままそこにいて』と書かれていた。
可奈美は、ココアが持ってきた籠、その中に所せましと敷き詰められているパンを見下ろす。
「それにしてもよくここまで作ったね」
「ココアちゃんとモカさんがね」
ハルトが
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