第二章
[8]前話
「とてもいい娘ですね」
「はい、この娘と家族であってよかったです」
「そうですね」
見れば妻と娘もいる、二人も笑顔だ。母は娘そっくりだ。
「では今から」
「皆で帰ります」
家までとだ、トゥルグはこう言ってだった。
妻と娘そしてボンククと共に家に帰った、そうして一家での幸せな生活を再び心から楽しんだ。だが。
彼は中国に仕事で武漢に行った時仕事で知り合った病院の清掃員ウー=リンチェンという初老で小柄な男性に家に招かれ夕食をご馳走になった時にこげ茶と黒の垂れ耳の雄犬を紹介されて悲しい顔になった。
「そうですか」
「ええ、シャオパオっていうんですが」
ウーは犬の頭を撫でつつ話した。
「リーさんという一人暮らしのお年寄りに飼われていて」
「そのリーさんが病気で、ですね」
「入院している間ずっと病院の前で待っていましたが」
「飼い主の人は」
「三ヶ月入院して」
「それでもでしたか」
「はい、ですがそれでもずっと待っていて」
それでというのだ。
「見ていられなくて私が」
「今はですか」
「引き取って育てています」
「悲しいですね、ですが」
「それでもですね」
「とてもいい子です、そんないい子放っておけないので」
今もシャオパオの背中を撫でつつトゥルグに話した。
「こうしてです、妻と一緒に」
「家族に迎えてですね」
「暮らしています」
「そうですか」
「はい、そちらの娘はよかったですね」
「私が戻って来て」
「世の中そうは限らないですね、ですが少しでも」
ウーはシャオパオを優しい目で見つつ話した。
「この子を癒したいです」
「クゥ〜〜〜ン」
見るからに大人しいが落ち込んでいることが明らかな彼をずっと見ていた、トゥルグはそのウーに言った。
「貴方ならそれが出来ますね」
「そうでしょうか」
「とても優しいですから。私はボンククに癒されて」
「シャオパオはですね」
「貴方に癒されます、人と犬はお互いを癒すものですね」
「そうですか、ではその様に」
ウーはトゥルグに応えて述べた。
「努力していきます」
「そうされて下さい」
トゥルグも応えた、ウーとこう話してからトルコに戻った。そして家に帰るとすぐにボンククの頭を撫でた。また入院しても戻ろうと思って。そしてこの娘を悲しませない様にしようと決意したのだった。
退院するまで待って 完
2021・7・16
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