悪意なき殺意
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うとしていた用務員にとっても同じ事らしかった。
だが、血は一切でない。代わりに、彼の体は徐々に灰色になっていく。
やがて、聞き取れない言葉を紡ぎながら、用務員の体は消滅していった。
そして、代わりにそこには、白いスク水姿の少女がいた。
ぼーっとしたような表情に、銀の長槍を近づける。命の恩人と認識しながらも、その特異な姿から、紗夜は礼が言えないでいた。
しばらくスク水少女___その名がスイムスイムであることなど、紗夜が知る由はない___を見つめていた。彼女の退屈そうな目は、しばらくその武器を泳ぎ、告げた。
「邪魔」
何が邪魔なのか、紗夜には判別がつかない。
たまたま通りかかったが、目障りだったからあの怪物を葬ったのか。それとも。
獲物を横取りされそうだったから邪魔だったのか。
スイムスイムは、今度はしっかりと紗夜を見据える。
そして。
「うわあああああああっ!」
紗夜は慌てて回避。
それまで紗夜がいた場所に、スイムスイムの武器が突き刺さった。
「マスターの言った通り。貴女をやっつけます」
彼女の発言の意味は何一つ分からない。だが、立ち止まれば殺されることだけは確かだった。
下ろうとした階段。だが、その先、階段の中から、スイムスイムの姿が現れる。
コンクリートの中を泳げるという異常性に青ざめながら、紗夜は階段を駆け上がる。
すでに人がいなくなって久しい三階のフロア。そこを駆ける紗夜は、壁が波打つ気配に屈みこむ。
丁度その頭上を、スイムスイムの殺意の刃が通過した。
「何なのっ!?」
さらに紗夜は逃げる。だが、廊下の左右を交互に飛び交う音に、紗夜の体はますます焦りを募らせていく。
「助けて……誰か……日菜……」
徐々に紗夜の声が弱々しくなっていく。
一方、スイムスイムの無情な水泳音は、どんどん近くなっていく。
そして。
「危ない!」
紗夜の体を、ココアが突き飛ばす。
スイムスイムの刃は、ココアの背中を切り裂き、彼女に悲鳴を上げさせた。
「保登さん!?」
思わぬココアの登場に、紗夜は驚く。地面を転がった彼女の背中は、今しがたスイムスイムの斬撃によって赤く染まっていった。
「保登さん!? なんで……?」
「えへへ……上級生の友達にあいさつに来たら、ビックリしちゃった……」
ココアは起き上がりながら、スイムスイムを見つめる。
「保登さん、大丈夫ですか?」
「うーん……あんまり……」
ココアは努めて笑顔で、紗夜へ対応する。
「千夜ちゃんたちを、先にラビットハウスに行くように言っておいてよかったよ……こんなことになってたなんて」
「そうですね」
そういいながら紗夜は
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