暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第87話:届かぬ声、届かぬ手
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サーに翳し、魔法を発動すると右手をゆっくりと奏の顔に近付けた。掌に浮かび上がる魔法陣に、奏は禍々しい何かを感じ必死に身を捩った。

「止せ、止めろッ!? アタシに何するつもりだッ!?」

 恐慌状態になった奏の言葉に対し、グレムリンはただ笑うだけで何も答えない。その間にも右手は奏の顔に近付いていく。
 あれに触れられてはいけないと本能で察し、奏は抵抗を強めたがグレムリンの左手は全く彼女を離さない。

「あ、あぁ――!? 止めろ、止め…………颯人ッ!!」

 奏の叫びも空しく、グレムリンの右手が奏の顔の上半分を包んだ。魔法陣が奏の頭に吸い込まれるようにして消えていく。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 自分の頭に何かが流れ込んでくる悍ましい感覚に、奏の悲鳴が周囲に響き渡った。




***




「…………ん? 奏?」

 その頃、颯人はフライトノイズを始末しながらスカイタワー上階へと突入していた。時折逃げ遅れた人々を逃がしながら、颯人は不意に奏の悲鳴を聞いた様な気がして思わずその場に立ち止まった。

 気のせい……にしては妙に胸が騒ぐ。奏に限ってそう簡単にやられる事は無いと信頼しているが、今のコンディションを考えればもしもと言う可能性もある。

「友里さん、奏の様子は?」
『奏ちゃんなら、今の所異変は見られないわ。一瞬バイタルが乱れたように見えたけど、今はとても安定してて何の心配もいらないくらいよ』

 あおいからの返答に、颯人はしかし不安を感じずにはいられなかった。まだ上階には逃げ遅れた人が居たので、こちらに向かった事は間違ってはいなかったがそれでも奏の傍を離れるべきではなかったかもしれないと言う気持ちが拭いきれなかった。

 だが奏の事ばかりを考えても居られなかった。今颯人の周囲には無数の武装した人間が気絶した状態で転がっていたのだ。彼らは顔付が日本人ではない。見るからにアメリカの軍人か何かと言った格好であった。

 奏の事で色々と気になる颯人ではあったが、さりとてこちらを見過ごすわけにもいかないので颯人は現状を報告した。

「あ、そぅ…………。それとこっちにアメリカの軍人か何かが何人も伸びてるのを見つけた。目に見える範囲だけど全員気を失ってるだけって感じだ」
『アメリカの? 一体どう言う事?』
「さぁね? 俺が来た時には全員お眠だったから何がどうしてこうなってるのかは分かんねぇよ。ただこいつらが派手にぶっ放したせいで犠牲者が出たのは確かみたいだ」
『分かったわ。とりあえずその人達の確保を――って、あぁッ!?』
「何、何事?」

 突然の悲鳴のような声。もしや奏の身に何かあったのではと心配する颯人であったが、状況はそれとは別方向で悪い方へと向かっていた。

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