偽りのサーヴァント
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いった男が、噴水広場でジャグリングをしていた。
彼はやがてハルトの存在に気付くと、ジャグリングの手を止めた。
「ありがとうございますみなさま。本日は誠に残念ながら、これにてお開きとさせていただきます」
すると、観客たちからは拍手が流れる。
平日昼なだけあって、年齢層はそれほど低くはない。少なくない娯楽を経験していきた人々さえも夢中にさせたピエロは、あっという間に私物をポーチに放り込み、ハルトのところへ歩いてきた。
「やあ。昨日ぶり。元気だったかい?」
「ああ。どうも」
「ハルト君のお友達? 初めまして、私保登モカです」
モカはピエロにあいさつした。
すると、ピエロは顔をぐいっとモカに近づける。
今にも耳元に触れようかという接近具合で、彼は語った。
「初めましてお嬢さん。貴女のような美しい女性と知り合えて至極光栄です」
ピエロは大仰な動きをしてお辞儀をして、右手をモカの前に突き出す。
すると、あっという間にその手には花が握られていた。
「お」
よくあるマジック。ハルトもやった経験は多いが、ハルトが舌を巻いたのは、彼のタネがどこにも見当たらなかったことだった。
「すごいな。やっぱり」
ハルトの称賛に、ピエロはにやりとほほ笑んだ。
「どうぞ。美しい花は美しい女性にこそふさわしい」
「ありがとう!」
モカはそう言いながら、花を胸のポケットに入れた。
「うんうん。あ、君の名前はなんていうの?」
名前。ハルトも聞いていなかったなと思いながら、ハルトは彼の返答に注目する。
すると、ピエロは口を大きく歪める。
「名乗るほどのものではありません」
彼はそれだけ言い残して、彼は後ずさりするように離れていく。やがて、日傘をさしながらどこかへ歩き去っていった。
「すごい独特なお友達だね」
「友達っていうか……昨日、モカさんを迎えに行ったとき、駅で会っただけの間柄なんですけど」
「でも、これからきっと仲良くなれるよね。……お?」
すると、モカが足元に目線を落とした。彼女の目線を追えば、その足元にウサギが眠り込んでいた。
「わあ! ウサギ!?」
「ああ。この公園、結構野生のウサギ多いんですよ」
「そうなんだ!」
モカがウサギを抱きかかえる。頭を撫でながら、目を輝かせていた。
「よく見れば、確かにあっちこっちにもウサギが一杯いるね」
モカの言う通り、草原に伸びる遊歩道は、ウサギで満たされていた。
それぞれはしばらくモカを見つめた後、それぞれ走り去っていった。
「あ! 追いかけっこ? 負けないぞ」
「え?」
ハルトが止める間もなく、モカが蜘蛛の巣を散らすウサギたちを追いかけていく。
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