砂漠編 喧嘩のついでに町を救った男達
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切れ味に影響が出ないアダイトが陽動を引き受けたことで、ディノとドラコは最大火力の斬撃を叩き込むことができたのだ。
だが、この速さで討伐が完了した要因は、武器だけではない。
「す……すす、すげぇ……! あんなバカデカい鳥竜種が、あっという間に……!?」
「どうなってんだよ、あの坊主達は……!」
彼らの戦いを目の当たりにした御者を含む商隊の人々は、それを肌で理解していた。
相手の急所のみに狙いを集中させ、的確に刃を沈める。そんな芸当をこともなげに完遂してみせた彼ら3人は、間違いなく只者ではないのだということを。
「……!? お、おい見ろ! オアシスを縄張りにしていた『奴』が……倒されてるぞ!?」
「ハンターだ……ハンターが来てたんだ、この近くに!」
「お、俺達……助かったのか!? やったぁあぁあ!」
やがて。近隣の町から、刺し違える覚悟でドスゲネポスを倒しに来た町民達も。力無く横たわる鳥竜種の姿を目の当たりにすると、商隊と同様に驚愕し、歓声を上げるのだった。
クエストを受注していたわけでもなければ、竜車の護衛を任されていたわけでもない。本当にただ、居合わせていただけだった新人ハンター達は。
全く意図せぬうちに商隊だけでなく、砂漠の町すらも救ってしまっていたのである。
「あぁ……神様はまだ私達を見捨ててはいなかったのですね……! ハンターの皆様、本当にありがとうございます! 何とお礼を申し上げればいいのでしょうか……!」
そして、汗だくになりながらもこの場に駆け付けてきた町長の娘も。眼前に広がる希望に満ちた光景に泣き崩れ、神とアダイト達に感謝の想いを告げていた。
この砂漠の地に暮らす人々としては珍しい、珠のように白い柔肌。そして、薄桃色の長髪の持ち主である彼女の美貌は、さながら妖精のようであり。
その容姿を目にした商隊の面々も、息を呑むほどの華奢な美少女……なのだが。
「なぁアダイト、さっきは何の話題で喧嘩してたんだっけ? 俺、もう全っ然思い出せないんだけど」
「さぁ……? ディノの方が覚えてるんじゃないか?」
「知らん。確かなのは、此奴を狩っている間に忘れてしまうような、くだらん内容だったということだけだ」
「ハハッ、違いねぇな!」
商隊や町民達の歓声など、意に介さず。町長の娘の、目が覚めるような美貌にも気づかないまま。ただ黙々と剥ぎ取り作業を続けるアダイト達3人は、喧嘩の原因すら忘れて他愛のない雑談に耽っていた。
町の命運を賭けた激闘……だったはずの今回の狩猟は、どうやら彼らにとっては「喧嘩のついで」だったらしい。
「……」
「おん? どうしたんだディノ、腹減ってんのか?」
「いや……問題はない」
その中で、独り神妙な表情を浮かべるディノの
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