特別編 追憶の百竜夜行 其の十二
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力と大剣の質量を乗せたその一撃は、上空から火炎で一掃しようと企んでいた雌火竜の翼を破壊し、大地に叩き落としていく。
それは、翔蟲が使えないアダイトに攻撃のバトンを繋ぐための「サポート」でもあった。
「決めてやりな、アダイト! コイツを倒して未来を切り開く……それがあんたの、役目でしょッ!」
「ああッ! ……オレ達全員の力なら、この群れだって打ち破れる! その証を、ここに立てるんだァッ!」
翼をもがれ、地に落とされたリオレイアはもはや半死半生。決着を付けるなら、今しかない。
アダイトはバーンエッジを振り上げ、雌火竜の頭部目掛けて一気に飛び掛かる。だが、1人でも道連れにしてやろうと殺意を露わにするリオレイアも、大顎を開き至近距離での火炎放射を放とうとしていた。
「させるかぁあぁあぁッ!」
「――! ウツシッ!?」
それを発射直前で阻止したのは、ウツシが操るバサルモスの熱線だった。「主人」の想いを表現するかの如く、灼熱の閃光は真横からリオレイアの大顎を撃ち抜いていく。
並の個体なら即死している威力だ。しかし大物の雌火竜はその一撃でも沈まず、突っ込んでくる岩竜の首を瞬く間に食い千切ってしまう。
「うおぉおぉッ!」
その衝撃で投げ出されたウツシは、翔蟲で受け身を取る間も無く、再び岩壁に叩き付けられていた。だが、傷が開き鮮血が噴き出ても、焔を灯したその眼には一片の曇りもない。
「ウツシッ!」
「アダイトッ! 皆ッ! この里を……カムラの里の未来を! 俺達に、勝利をッ!」
「……あぁッ!」
彼が切実に望んでいるのは、カムラの里の平和。そして、その可能性を未来に紡いでくれる、同期達の勝利であった。
そのためならば、死に瀕するほどの傷も厭わない彼の「焔」に呼応するように。雌火竜の眉間にバーンエッジを振り下ろすアダイトに続き、周囲の同期達も最後の一撃を仕掛けていく。
「でぇやぁあぁあぁあーッ!」
やがて、彼らの絶叫が天を衝き。
とどめを刺された「大物」は、断末魔の咆哮を上げ。ついに轟音と共に倒れ伏し、その生涯に幕を下ろす。
「……!」
その瞬間を背中越しに感じ取ったフゲンが、目を剥いた瞬間。「首魁」を失ったモンスター達は突如進路を変え、四方八方へと逃げるように駆け出して行った。
「やりおったのか、ウツシ……! 皆の者ッ……!」
群れを率いる「中枢」を狩られた今、彼らはもはや烏合の衆に過ぎず。どこに向かえばいいのかも分からないまま、この砦から立ち去るしかなくなっていたのである。
眼前に広がるその光景を目にしたフゲンは、歓声を上げることも忘れ、太刀を握る手を震わせていた。自分が見込んだ若者達は、ついにこの災厄を乗り越えたのだと。
「お、終わっ…
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