特別編 追憶の百竜夜行 其の十
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
うはさせじと、現場の近くにいた同期の1人が大剣を振り上げ、怒号と共に加勢して来た。
女性でありながら男性用のスカルダシリーズで全身を固め、顔を完全に隠しているイスミ。彼女の両手に握られたバスターソードIの刃は、地を踏み締めるジンオウガの前脚に沈み込んでいる。
「エルネア、無事かいッ!? こいつの注意はあたしが引き付ける、あんたはさっさと次弾を装填しなッ!」
「イスミ……! 迂闊に近づいてはダメ、そいつの尾が届く範囲は……!」
男性顔負けの膂力で雷狼竜の肉を切り裂く彼女の視線は、自身よりも一回り歳下の同期へと向けられていた。だが当のエルネアは、殺意を込めた眼光でイスミを射抜くジンオウガの動向を察し、声を上げている。
「……がッ……!?」
「イスミッ!」
だが、遅かった。電光を纏うジンオウガの長い尾は、遠心力を乗せた強烈な打撃をイスミの顔面に叩き込んでしまったのである。
頭部のスカルダテスタを破壊されたイスミは、その鋭い切れ目の素顔を露わにされなら、激しく地を転がっていった。
その光景を目の当たりにしたエルネアは、ジンオウガの注意を引き付けようと何発もの弾丸を撃ち込むのだが。雷狼竜は彼女の銃撃など意にも介さず、自分を斬り付けた女剣士だけにどす黒い殺意を向けている。
そして、意識を失ったまま倒れ伏している彼女にとどめを刺そうと、前脚を振り上げた――その時。
「……!?」
崖の上から、小石のようなものがぶつかった音が聞こえてきたかと思うと。そこから轟音と共に落下してきた岩石が、ジンオウガの脳天に直撃してしまったのである。
予想だにしない不意打ちにのたうち回る雷狼竜は、イスミにとどめを刺すことも忘れて「悪戯」の犯人を探し始めていた。それから間もなく、ジンオウガの双眸は「落石」の実行犯を捕捉する。
「……その様子だと、俺からの『プレゼント』はよく効いたみたいだな」
やや離れた位置から、左腕前腕部に装着された小型の弩――「スリンガー」を構えていた1人のハンター。「彼」がその得物で発射した小石が、崖上の岩石を突き動かし、ジンオウガの頭上へと落としていたのである。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ