特別編 追憶の百竜夜行 其の七
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「はいはーい! ディノさんディノさん、それなら私もお供しますよぉー! あいつの撹乱なら任せてください! 私、ギリッギリで避けるの超得意なんでっ!」
「ノーラ……お前、そんな格好でここに来たのか」
ディノとクリスティアーネの間にあった、仄かに甘いムード。それはディノの傍からひょっこりと顔を出してきた、同期達の中でも指折りの「変わり者」によって、完膚なきまでにぶち壊されてしまうのだった。
「当然です! 装備なんて買ったら、生活費が危ぶまれるじゃないですかっ! ……それともぉ、ディノさんが私を養ってくれるんですかぁ?」
使い込まれた跡が窺えるハンターナイフに、扇情的なボディラインを強調するインナー姿。
そんな初期装備そのものといった出立ちの彼女――ノーラは、その頼りない外観に反した自信満々な笑みを浮かべて、ディノの胸板に白い柔肌と豊満な胸を擦り付けている。くびれた腰を艶かしくくねらせているその仕草は、さながら気まぐれな猫のようであった。
「うふふ……全くもう、ノーラ様ったら……うふふっ……」
「……ッ!?」
刹那。背後にいるクリスティアーネの方から凄まじい殺気を浴びせられたディノは、えもいわれぬ悪寒を覚えながらノーラを引き剥がす。
「ノ、ノーラ。陽動の件については確かにありがたい申し出だが、気持ちだけ貰っておく。奴の爪や尾を防具も無しに食らえば、お前とて怪我では済まな――」
「じゃあ、いっきまーすっ!」
「――って、おいッ!?」
よりによって、防具すらない彼女にそのような危険な役割を任せることなどできない。それがディノの結論だったが、ノーラはそんな一般論など知ったことではないと言わんばかりに、軽やかな足取りでナルガクルガに向かっていく。
そして、ディノはすぐに思い知るのだった。彼女が頼りないのは、その見た目だけなのだということを。
「ほらほらぁ、どうしちゃったのかな〜? そんなノロい攻撃じゃあ、一生掛かっても私には当たんないよ〜っ!」
「なっ……!」
自分以上に、紙一重の間合いで爪と尾をかわしながら。彼女は巧みにその刃を振るい、迅竜の身体に傷を付けていたのである。
立ち回りの技術にかけては、間違いなく自分以上。そんな彼女の真価を目の当たりにしたディノは、「変わり者」に対する評価を改めざるを得なくなっていた。
彼女が作り出した「隙」は、ディノが少しでも戦いやすくなるように計算し尽くされたものであり。そのサポートを受けながら太刀を振るい続けていく中で、彼はノーラが持つハンターとしての才覚を、肌で実感し始めていた。
「……まさか、本当にこれほどの至近距離でかわし続けるとは。防具がないから身軽、というだけの動きではない。無謀極まりない装備はともかく、あの技巧は紛れもなく
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