特別編 追憶の百竜夜行 其の一
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」が飛び込んでくる。
ランゴスタの近縁種か。そう判断したアダイトは再びバーンエッジを引き抜こうとして、またしてもウツシに制止されてしまうのだった。
「……!? 気をつけろ、ウツシ! 新手の虫型モンスター……だ……!?」
「ふふっ、相変わらず君の反応は見ていて飽きないなぁ、アダイト。……これは翔蟲。俺達の頼れる仲間さ」
それはガルクと同じようにウツシが従えている、甲虫の一種だったのである。カムラの里ならではの技術を目の当たりにしたアダイトは、再び目を剥いていた。
「お、お前の里じゃあモンスターを飼い慣らして狩猟してるのか……!?」
「オトモアイルーの延長線上と思えば、そう不思議なことじゃないだろう? 他の皆もガルクや翔蟲を見たら、驚くことになりそうだね」
「他の皆、って……オレ以外の連中にも声を掛けてたのか?」
「俺が信頼を寄せている同期達全員に、この件の便りを送っている。他の皆には、里に来るまでの路銀込みで報酬を用意してるんだが……恥ずかしながら、君だけはその分の額が工面できなくてね。だからこうして、直接迎えに来たってわけさ」
だが、いつまでも驚いている場合ではない。すでにウツシは、自分が信頼できる「同期」全員に声を掛けているというのだ。
百竜夜行と呼ばれるこの災厄は、多数の大型モンスターを同時に狩猟せねばならないという極めて特殊なケースであり。今回だけは1人でも多くのハンターを集めるために、「連続狩猟」という形で複数のクエストを用意しているらしい。
そうすることにより、本来なら4人までしか受注できないという制約をかわして、何人ものハンターを呼び込めるようにしているのだが。当然その分だけ、依頼する側の費用も増してしまうのである。里に来させるための旅費すら、負担出来なくなるほどに。
そんな際どい懐事情を抱えながらも、どうにか里を救いたいと奔走するウツシの想いはきっと、便りを受け取った各地の同期達にも届いている。彼の言葉に唇を噛み締めるアダイトは、そう信じるより他なかった。
「……そんなもんなくたって、オレは蹴ったりしないよ」
「ははっ、君ならそう言うと思っていたよ。……それじゃあ俺が困るのさ。これくらいは、させて貰わないとね」
それはウツシも同様であり。友情と義に厚い者達ばかりだと理解しているからこそ、里の都合に巻き込んでしまうことに対して、心苦しさを覚えている。
しかし、それでも今だけは。その葛藤を飲み込み、前に進まねばならないのだ。里に迫り来るモンスターの群れは、人間の都合など考慮してはくれないのだから。
◇
――そして、迎えた決戦の日。完成を待たずして死闘の舞台となった翡葉の砦は、モンスター達の咆哮と断末魔が止まぬ修羅場と化していた。
「
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