特別編 追憶の百竜夜行 其の一
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い。しかし、ただ強いだけのハンターを里に入れるわけにはいかない。
「……そうか」
その狭間に揺れながらも、希望を求めてここに来たウツシの表情に秘められた、微かな「憂い」をアダイトは見逃さなかった。
「それならもう、遠慮はいらないな。……行こうウツシ、カムラの里は遠いんだ! 迷ってる時間なんてないはずだろッ!」
「……あぁ! 感謝するよ、アダイト!」
力が込もるあまり、震えていた彼の拳を掴んだ少年は、力強く参加を宣言する。その言葉に救われたウツシも、ようやく本来の豪快さを取り戻したかのように、声を張り上げたのだった。
何事かと目を丸くしている周囲のハンター達や受付嬢の視線など、意に介さず。
◇
かくして、共に百竜夜行に立ち向かうことになった2人は足早に酒場を後にすると、眩い日差しに照らされた街中へと繰り出していく。
カムラの里に行くなら「足」が必要だと思い立ったアダイトは、行商の馬車に視線を向けていた。
「ちょっと割高になるけど、少しでも速い馬車を借りるしかないな。ちょっと待ってろよウツシ、今手続きに……」
「その必要はないさ、アダイト。馬車より速い『足』なら、すでに用意してある」
「え……?」
だが、それよりも早く。ウツシが口笛を吹いた瞬間、牙獣種に相当する狼のようなモンスター「ガルク」が2人の前に現れた。
「な、なんだ……!? なんでモンスターが街の中にッ!?」
「あぁ、『ガルク』を見るのは初めてだったね。訓練所で一緒に頑張ってた頃に、一度話したことがあっただろう?」
「こ、こいつが……?」
一目見た瞬間、街にモンスターが入ってきたのかと誤解したアダイトは、バーンエッジを抜こうとしてウツシに嗜められてしまう。そんな初々しさを残している戦友の様子に、カムラの使者は微笑を溢しながら、愛犬の背に乗るよう促していく。
「ふふっ、こいつも君が気に入ったようだし……行こうか、アダイト。俺の後ろに乗ってくれ!」
「あ、あぁ。けどさ、2人も乗って大丈夫なのかよッ――!?」
ウツシが言うなら大丈夫なのだろう、とは思いつつも不安を拭い切れなかったアダイトは。2人も乗せているとは思えないほどの速さで、街を飛び出していくガルクの脚力に圧倒されてしまうのだった。
「うわぁあぁあッ!? な、なんだよこのスピードッ!」
「しっかり掴まっていてくれよ、アダイト! こいつの速さなら、里まであっという間だからなッ!」
その勢いのまましばらく走り続けて、ようやくアダイトがガルクの速さに慣れてきた頃には、すでにミナガルデが見えなくなるほどの距離に至っていた。
カムラの里に最短ルートで辿り着くために、森の中へと突っ込んでいった2人の視界に――やがて、煌々と光り輝く1匹の「蟲
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