特別編 追憶の百竜夜行 其の一
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たのだという。
それに近しい現象の兆候が確認されたのは、約1週間前のことであった。
里そのものが滅びかけた数十年前の悲劇を繰り返させないためにも、現在は「翡葉の砦」と呼ばれる防衛線の構築も進んでいるのだが……その防壁もまだ、万全と言える状態ではない。
このままでは砦の完成を待たずして、モンスター達が里に押し寄せてしまう。なんとしても今回の大移動による被害だけは、食い止めなければならない。
しかし、如何にフゲンが他の追随を許さない剛の者であっても、単身で大型モンスターの群れを屠るのは容易ではなく。砦の設備も不十分な上に里守達の訓練も万全ではない現状では、この「波」を乗り切るのは困難を極める。
「……それでわざわざ、オレを呼ぶためにこんな遠方まで飛んで来たっていうのか? 相変わらず、やることが豪快だよなぁ」
「そこまでしてでも、守りたい故郷がある……ということさ。それに、信じていたからな。君ならば、必ず引き受けてくれると」
そこで、ハンターの資格を得たばかりの少年――ウツシは、信頼の置ける「同期」のハンター達に助太刀を依頼するべく。西シュレイド地方南部の都市「ミナガルデ」を訪ねていたのである。
その街の酒場で旧友との再会を果たした、彼と同じ1年目の新人ことアダイト・クロスターは。暑苦しいほどに真っ直ぐなウツシの眼に、深々とため息をついている。
一方、そんな彼が纏っているレウスシリーズの防具に、ウツシは「期待」に満ちた笑みを零していた。
1年目のハンターはその未熟さもあり、半年も経たずに命を落とす者が多い。運と才能に恵まれた優秀な者でも、3年目までは鳥竜種の狩猟が精一杯であることがほとんどだ。
そんな中でアダイトは1年目でありながら、何頭もの火竜を狩ってきた証である装備を身に付けているのである。その佇まいに、「寄生」特有の着られているような雰囲気は全く見られない。
「もちろん、断るつもりなんてないけどさ。1年目のオレが役に立てるのか? このミナガルデには大ベテランのハンターが大勢いるんだし、そっちを頼った方が……」
「確かに、強さだけで選んだ方が確実ではある。だが俺は、俺の目で里の未来を託せるハンターを選びたいんだ。里長も、それで構わないと言ってくれた」
「ウツシ……」
実力こそ一流だが、素行不良のあまり派遣先の村から「出禁」を言い渡されたハンターの例は、様々な場面で耳にすることがある。
ましてやカムラの里は、独自の軍事力を有する極めて特殊な地域なのだ。里側から外部のハンターを呼ぶとなれば、その人選は慎重にならざるを得ない。
そこで、ウツシが自分の目で見てきた「同期」の新人ハンター達に白羽の矢が立ったのである。
なんとしても里は守らねばならな
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