始業式
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「なっ……!」
新年早々遅刻という憂き目に遭った。
オレンジの長い髪と、桃色の髪飾りが特徴の少女。普通の高校生にしてはオシャレに強く注意を払っているような化粧が特徴で、にっこりとほほ笑めば、周囲も明るくなるような顔つき。
事実、モデルとしても仕事をしている彼女が、新年最初の登校に遅刻。
その事実を何とか隠したい少女は、少し考えて、脳の電球を光らせた。
「おい! アベンジャー」
少女が指を鳴らす。すると、近くのアスファルトより、それは現れた。
桃色の髪をした少女。寒い春の昼間にスク水という似合わない服装なのにも関わらず、眉一つ動かさずに少女を見つめている。
アベンジャー。復讐者を意味する単語。
人の名前としては相応しくないそれが指し示すスク水少女は、少女の指示を待つようにじっと見つめている。
「学校の壁、どこでもいいからあたしを潜れるようにしろ。てめえの能力なら、可能だろ?」
「はい。マスター」
マスター。そして、アベンジャー。そう呼び合う間柄など、この見滝原の街では一つしかありえない。
聖杯戦争の参加者。
スク水少女が学校の壁に手を触れる。すると、コンクリートでできた壁は波打ち、やがて個体から液体へ変わる。
「サンキュー」
少女は礼を言いながら、勢いをつけて液体と化したコンクリートを潜る。一瞬の全身の違和感を突破すれば、そこはもう見慣れた見滝原高校の敷地内だった。
「うっし。あとは、バレねえようにすりゃ問題ねえ」
壁が元に戻った動きに関心を示すことなく、少女は足を急ぐ。
校舎から下駄箱に到達、そのまま階段を駆け上がり、教室へ急ぐ。
だが。
「蒼井さん」
その時、少女に冷たい声がかけられた。振り向くと、お堅い風紀委員が腕を組んでこちらを睨んでいた。
「遅刻ですよね?」
質問が質問ではなく答え合わせになっている。
そうとも言わんばかりの勢いで、風紀委員長である氷川紗夜が少女を睨んでいた。
「な、何のこと? あきら、ちょっとわかんなーい」
少女、改め蒼井晶。芸能人としての言葉遣いでこの場を誤魔化そうとしたが、紗夜には通じず、ただ冷たい声で言われた。
「先生に報告させていただきます。少し気が抜けすぎですよ」
「なっ!」
弁明の余地などなく、紗夜はそのままそそくさと立ち去っていった。
茫然と廊下に取り残された昌の口は、次の言葉を紡いだ。
「気に入らねえ……」
紗夜の背中を見つめながら、昌は指を噛んだ。
「んだよアイツ……目にもの見せてやろうか……」
ぎりぎりとした目つきに、紗夜が気付くことはない。歩み去っていった頃合いに、昌は右足を踏み
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