第一章
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人は見て聞いている
百田家の夫は最初は自分の職場の自分の席に妻とふわりが一緒に映っている写真を飾っていた、それでだ。
先輩にも同期にも後輩にもそして上司にもふわりのことをよく話していた、だが自分達の子供が生まれると。
自分達と子供の写真を飾った、それを見た同期の一人が彼に尋ねた。
「あれっ、ふわりちゃんどうしたんだ?」
「ああ、あの犬?」
「おい、あの犬?」
同期も他の近くにいた者達もその単語と素っ気ない口調に眉を曇らせた。これまで彼はふわりを自分の娘と呼んでいたからだ。
だが急にあの犬と言ったので怪訝になった、それでその同期は最初に尋ねた者として周りを代表して聞き直した。
「ふわりちゃんがか」
「それがどうかした?」
「いや、ふわりちゃんお前のとこの娘だろ」
三人だけの写真を見て言うのだった。
「どうしたんだよ」
「どうしたって捨てたよ」
返事は素っ気ないものだった。
「保健所に」
「捨てた!?」
この素っ気ない言葉に誰もが驚いた、言った本人以外は。
それでだ、同期がまた代表する形で問うた。
「ふわりちゃんそうしたのか」
「性格が変わって朝から晩まで吠える様になったんだよ」
彼は周りの驚きに気付かないまま答えた。
「それで子供生まれたばかりなのに妻も子供も参るからって」
「それでか」
「ああ、もういらないから」
こうも言った。
「だからだよ。それがどうしたんだ?」
「そ、そうかよ」
同期の一人も他の面々もだった。
ここで目の色が変わった、そして。
彼の席の傍のゴミ箱を誰かが見た、するとそこに。
ふわりの写真があった、もうそれは明らかにいらないものだった。
周りはもう彼に何も言わなかった、だが。
その夜彼の同期の者達は彼だけを呼ばずある居酒屋に集まってふわりのことを聞いたその者の話を聞いた、そうしてだった。
彼等は口々にこう言った。
「ああした奴だったんだな」
「命を何とも思ってないんだな」
「可愛がっていて捨てるんだな」
「それも平気で」
「しかももういらない」
「ものみたいに扱うな」
「ふわりちゃんだって可愛がられて嬉しかっただろ」
彼女もというのだ。
「そんなことも考えないでか」
「あっさり捨てたのかよ」
「殺処分されるかも知れない保健所に」
「吠えるならどうしてかも考えないで」
「調教も受けさせないで里親も探さないで」
「死んでしまえか」
「そんな奴だったんだな、あいつ」
居酒屋だが今は酒を飲まずに話した。
「命なんてどうでもいい」
「可愛がっていても別の可愛がる相手がいればポイ」
「相手の気持ちも考えない」
「そうしたことをしても平気で言う」
「そんな奴なんだな」
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