るんって来たああああああ!
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てくれるまで少し動きを止める。紗夜はしばらくして、続きを促すように目線を投げた。
ハルトは右袖をまくろうとして、一瞬踏みとどまる。左袖をめくり、真冬の空の下、何も仕込んでいないことを大衆に晒す。
「さあさあ皆さま。この手には、タネも仕掛けもございません」
日菜と、彼女の隣で立っている姉、そして道行く人々の一部が、ハルトの腕に注目する。
十分な視線を感じたハルトは、そのまま左手で指をパチンと鳴らす。すると、その手には、どこから調達したのか、黄色の造花が握られていた。
「ええ!? どうやったの!?」
日菜が立ち上がってハルトに問い詰める。
だが、ハルトはそれに応えることなく続けた。
「さあさあ、タネも仕掛けもございません。それでは、次に彼女がどんなものができるか見せていただきましょう!」
ハルトはココアを煽りながら、少しずつ離れていく。
よし、と気合を入れたココアは、手に持ったステッキを握りながら言った。
「私だって! ハルトさんがここからマジックの色々するの、見てるんだから! 行っくよ〜!」
「……! ココアちゃん、ちょっと待って!」
異変に気付いたハルトが思わず声を上げるが、時すでに遅し。
本来は天高く伸びていくはずのステッキは、上下を逆転に持ったココアの腹へ伸びていった。遠慮のないバネの入ったそれは、ココアに「ぶっ!」と悲鳴を上げさせ、悶絶させた。
「あっちゃ〜……」
「あははは! なにそれ!」
結局、この滑稽な奇術を楽しんでいたのは、日菜ただ一人だけだった。
その時。
「お嬢さん。そこ、よろしいですか?」
突如として、男性の声がココアの後ろから聞こえてきた。
見てみると、彼女の背後に、いつやってきたのか、ピエロの姿があった。
ピエロと言っても、肌を白く染め上げた奇天烈な恰好をした人物ではなく、普通の肌色の男である。
彼をピエロだとハルトが感じたのは、左右を白と黒で分けた服装と、右手に持った無数の風船からの印象からだった。
その服装は、ハルトに別の人物の姿を思い起こさせた。
「モノクマの擬人化?」
あまり連想したくない名前を口にしながらも、ハルトはそのピエロの動きを見ていた。
風船を片時も手放さないまま、ジャグリングをし、予め仕掛けてあったのであろうか、空中に張った紐で一輪車の綱渡りをし、大勢の注目を集めた。
「すごいな……あれ」
ハルトが思わずつぶやいたところで、ピエロがハルトの前に着地した。ご丁寧に紐もその右手に回収しており、握られていた風船の手を放す。
無数に空へ広がっていく白と黒の斑点模様。それは、ココア、日菜、紗夜のみならず、忙しくしているはずの人々。そして、ハルトさえも見と
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