ガンナーのマスター
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呼び鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ」
可奈美が笑顔でそういうと、入ってきた少女は会釈をした。
ボブカットに切りそろえた髪と、左目にあるほくろが特徴の少女。グレーのコートを羽織った彼女へ、可奈美は案内する。
「お好きな席へどうぞ」
少女は、窓際の席へ着く。彼女へ水を出したところで、少女は「すみません」と声をかけた。
「はい。お決まりですか?」
慣れてきた接客応対。このままなら、どんな人が来ても動じずにできそうだなと思いながら、可奈美は返す。
だが、少女の口からは注文は出てこなかった。彼女の口から出てきたのは。
「松菜ハルトさんと、衛藤可奈美さんはいらっしゃいますか?」
自分の名指しだった。
薄っすらと笑みを解き、可奈美は少女を見つめた。
「衛藤可奈美は私ですけど……あの、どこかで会いましたか?」
試合で対戦したことがあるのなら、その剣術を含めて可奈美が忘れるはずがない。そもそも、それでいてハルトの名前を引き合いに出されるなど、理由は一つしかない。
「もしかして……聖杯戦争の……参加者っ!」
可奈美が後ずさる。
さらに、少女は自らの右袖を捲った。そこには、彼女が聖杯戦争の参加者、マスターと呼ばれるに然る枠組みであると証明する、令呪があった。
「初めまして。セイヴァーのマスター、衛藤可奈美さん。ガンナー……リゲルのマスター、柏木鈴音です」
「ガンナーの……マスター?」
「貴女と直接会うのは初めてね」
いつの間に現れたのか、ひどく冷たい声が彼女の向かい席から聞こえてきた。
いつ入店したのか、金髪の女性がゆっくりと腰を下ろしていた。
「ガンナー、リゲルよ。ウィザードから私のことは聞いてるでしょ?」
「は、はい……」
可奈美は頷いた。
聖杯戦争。この見滝原で行われる、願いをかけた戦い。マスターに選ばれた参加者は、サーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚し、最後の一組になるまで戦い続けるというものである。
先月。年の暮れに、参加者の一人であり、宇宙人のバングレイが、古代大陸のムー大陸を復活させ、世界中を大混乱に陥れた。その際、聖杯戦争の舞台も見滝原からムー大陸へ移り、そのさいハルトが出会ったのがリゲルというサーヴァントらしい。
言われてみれば、確かにリゲルの風貌にも見覚えがある。ムー大陸での最終決戦の際、祭壇に可奈美が駆けつけたころには、もうほとんど戦いは終わっており、その場に彼女の姿もあった。
鈴音は続ける。
「先日はリゲルがお世話になったみたいなので、お礼に来ました。……松菜ハルトさんは、今はご不在みたいですけど」
「今出てて……」
可奈美は、これ以上の会話に行き詰まる。
「えっ
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