暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
ガンナーのマスター
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最初はチノの頭に乗ってるアンゴラウサギ、ティッピーが喋っているのかとも思ったが、これはチノ曰く腹話術らしい。
 注文のものを持っていった可奈美は、ブレンドを飲む不審者の声を聞いた。

「う〜ん。おいしい」

 どうやらお気に召していただいたようで、可奈美は肩を撫で下ろした。
 カウンターの内側で待機していると、鈴音が歩み寄ってくる。

「このお店、色々と変わった人が来るんですね」
「お客様、ラビットハウスは初めてですか」

 チノが聞いた。
 すると鈴音は頷く。

「はい。たまに来ます」
「ありがとうございます」

 聖杯戦争関係が無くなっても、彼女はここに来てくれるだろうかという疑問を可奈美は押し殺す。
 その時。

「このパン、もちもちが足りない!」

 そんな尖がった声が店を貫いた。
 驚いた可奈美、チノ、そして鈴音は、立ち上がった不審者へ注目した。

「「お、お客様!?」」
「何なの?」

 リゲルも唖然とした表情で不審者を見守っている。
 不審者は、周囲の視線に構わずにキャリーバックを開けた。すると、その中からは、パック詰めされた白い粉が現れた。

「なにあれ?」

 可奈美が首を傾げる間でも、不審者の暴走は続く。

「私が、教えてあげる」

 可奈美たちへにじり寄る不審者の異様なオーラに、可奈美は後ずさった。

「な、何を……?」
「本物の……」

 不審者は勢いよく白い粉のパックを突き出した。

「本物のパンの味を、この小麦粉で!」
「パ、パンの味?」

 チノが冗談抜きで怯えている。その隣では、鈴音が「何ですか本物のパンって」と呟いていた。

「えっと……どう収拾すればいいんだろ……ところで、お客様は一体何者なの?」
「私?」

 可奈美の質問に、不審者は待ってましたとばかりに口を歪める。

「私は……」

 帽子とサングラスを同時に手に取り、不審者は___彼女は宣言した。

「私です!」

 その……栗色の長いウェーブ髪と、紫の目が特徴の女性に対し、可奈美とチノは同時に叫んだ。

「「本当に誰―っ!?」」
「あの……お会計……」

 すでにリゲルの声は、誰も聞き届けてはいなかった。
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