アインクラッド 前編
Dive to Sword Art Online the World
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、ない」
キリトが頷くと、クラインはしてやったり顔をキリトに向けた。すると、少し癪だったのだろう、キリトが少々意地悪さを増した声色で言った。
「そんな顔してていいのか? 5時半にピザの出前、頼んであるんだろ?」
「ああーーっ!! やべぇ俺様のアンチョビピッツァとジンジャーエールがぁー!!」
目をひん剥いて叫ぶその姿にキリトは口を緩め、マサキも不自然に見られないよう、口元を故意に緩めると、芝の上に寝転がった。
「ま、そのうち運営側で強制ログアウトなり何なりの処置が取られるだろう。それまではどうしようもないんだから、寝たほうが無難だ。……それとクライン、そういうことならピザのレシートを取っておいて、後でアーガスにクレーム入れれば、お詫びの食事券か何かくれるかもしんねぇぞ?」
「ま、マジかマサキ!?」
目をキラキラと輝かせるクラインをよそに、マサキは一人のんびりと目を閉じた。が、その一方で、彼の頭脳はすさまじい速さで回転を始めていた。
――自分たちがログインしてからかなりの時間がたっている以上、この世界の誰も異変に気付いていないということはまず考えられない。そして、異変に気付いたプレイヤーは十中八九GMコールをするだろうから、運営にもこの事態は伝わっているはずだ。そして、それなら既に何らかの処置やアナウンスが行われていないとおかしい。つまり――。
その結論に辿り着いたマサキは、茅場からナーヴギアとSAOが届いたときと同様の高揚感を噛み締めながら、口元を獰猛な微笑で彩り、 “その時”を待った。
そして世界は、それまで顔を覆っていた虚構という名の仮面を、突如としてかなぐり捨てた。
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