アインクラッド 前編
Dive to Sword Art Online the World
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かけてきた趣味の悪い赤バンダナの男の勢いに押され、まるでNPCのような硬い動きで頷いてしまった。途端に、赤バンダナの男は顔をほころばせる。その姿を見てキリトはようやく自分がした行為の意味を知り、後悔したが、今更では後の祭りだ。仕方ないか、とキリトは強引に納得し、自分がこれから向かう武器屋へと彼を案内しようと口を開きかけたところで、
「悪いんだけど、俺にも案内を頼めるかな?」
またもや乱入者に捕まったのだった。
マサキが路地裏へと入ると、追いかけていたプレイヤーが立ち止まって誰かと話していた。少し様子を見ていると、どうやら他にもマサキと同じことを考えていた者がいたらしく、さっきの彼にレクチャーを頼んでいた風で、勢いに気圧されたのか、二つ返事で承諾している。対話に関する経験が乏しいのだろう。
押しに弱いタイプだと判断したマサキは、相手の同様が解けないうちに一気に距離を詰めると、そのままの勢いで言った。
「悪いんだけど、俺にも案内を頼めるかな?」
「「は?」」
その疑問符は新しい乱入者への驚きが半分、その乱入者の容姿に対する驚きが半分だった。
マサキのアバターは決して見た目が悪いわけではない。ないのだが、作るときの彼が適当だったためか、現実のマサキの容姿にかなり近いものになってしまっていた。もちろん、全てが同じというわけではない。だが、細いがシャープな切れ味を持った眼や、すっと筋の通った鼻など、主なパーツは現実と似通っている。
それでも雅貴の顔はなかなかに整っていると形容しても良い造形をしているため、特に見た目に問題があるわけではない。――たった一つ、今マサキが立っている空間がゲームの中だということを除けば。
ゲーム内部での仮想体は、たいてい元の顔よりも格好良く作られる。わざわざゲームの中でブサイクになることはないからだ。そして、その格好良く作られた顔というのは、大体が日本人離れした、もっと言えば、それこそRPGゲームの主人公パーティー然としたものになることが多い。現に、マサキの前で目を見張っている二人は新しいゲームの登場人物だと言っても差し支えない程のイケメンであり、それに比べるとマサキの顔は地味というか、影が薄い感は否めない。彼らの反応は少々失礼ではあるが、感情表現が現実よりも過大になるSAO内部であることを考慮すれば正常なものであろう。
目を見開いたまま数秒間硬直していた二人だったが、そのままでいるのはいくらゲーム内部でも失礼に当たると思い、慌てて顔を引き締めた。
「えっと、それじゃあまず武器屋、行く?」
まだ動揺が抜け切らない表情でキリトが呟くと、目の前の二人は(特に赤バンダナの方が)大いに喜んで見せた。
「ありがとう。俺はマサキだ。よろしく頼む」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ