無間アスタリスク
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じられる、犠牲を良しとした者達の手によって。
だからこそ私はこの次元世界を去りたいのだ。このままここにいれば、私個人の意思を無視して世界存続のために利用されるとわかっているから。ああ、そうだ。私は私でありたい。月詠幻歌の歌姫ではなく、ニダヴェリールの月下美人として生きるために、
「私はシャロン・クレケンスルーナ、ニダヴェリールの月下美人だ」
だから次元世界の人間が求める“偶像”になんかなってたまるか。そうして鏡に映る自分の姿に、私の在り方を改めて宣言する。後ろでアインハルトちゃんが問いかけてきたけど、内容が内容なので答えようが無かった。
それはそれとして……、
「ごめん、イクス」
『朝からいきなり謝ってくるなんて、どうかしたんですか?』
「いや……勝手に記憶覗き見ちゃったから」
『覗き見? あぁ……同化している以上、記憶の流出みたいな副作用が起こることもあり得ますか。まあ……恥ずかしいと言えば恥ずかしいのですが、実の所あまり気にしていないので……。シャロンが私のどの記憶を見たのかは知りませんが、内容次第ではむしろ私の方こそ謝るべきでしょうし』
「なんで? 例え仲の良い友人でも、勝手に自分の記憶を見られたら不愉快でしょ?」
『普通ならそうでしょう。でも私の記憶は凄惨なものが多いですし、見えたのも別に故意じゃないんですから、私は許します。だからシャロンが重く受け止める必要はありません』
「寛大な対応ありがとね」
夢でイクスの記憶を見た件は、彼女の許しを以って終いとなった。さて……それじゃあ今日も世紀末世界に帰るべく頑張るとしますか。
と、アウターヘブン社の支給品のワイシャツから着替えようとした私は、ふと気づく。
「あ、今日着る服……」
エクスシア・ドレスは昨日洗濯に出したし、世紀末世界から着てきたチュニック系の私服はボロボロなので一度修繕する必要がある。つまり今、まともな服が手元に無い。
「しまったなぁ。セインがいる内にお願いするべきだった」
ついさっきまでいた彼女はディープダイバーを使って、他のナンバーズの所へ帰ってる。今更呼び戻すのも気が引けるが、この場合はしょうがない……。
コンコン。
「ん、起きてるか、シャロン?」
「ケイオス? あ、おはよう」
「おはよう。それより起きてるなら何故部屋から出てこない? 何かあったのか?」
ノックしてから扉越しにケイオスが話しかけてきたので、事情を説明する。ちなみに昨日から二徹させるのも悪いと思い、今回は見張りを頼んでいない。にも関わらずケイオスが来てくれたのは、この状況では好都合で、彼に私が着れる服が無いか尋ねてみる。
「ん、兵士の服なら今は在庫が無い。どうしてもいるなら強奪するって手
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