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盲導犬の抵抗
第二章

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「これまでご苦労だったね」
「じゃあね、さようなら」
 沖田はずっと一緒にいた彼女と別れる辛さを見せず笑顔で送り出そうとした。だが。
 サリーはその場から動かない、介護の人はその彼女を見て驚いた。
「沖田さんから離れたくないのかい?」
「クゥ〜〜〜ン・・・・・・」
「もう自由になれるのに」
「もう次の子が来ているのに」
「ワン」
 サリーと同じ種類だが茶色い毛の雄犬だった、名前はゴンという。
「それでもなんだ」
「施設に入りたくないんですね」
「ずっと僕と一緒にいたいんですね」
「盲導犬は絶対に飼い主に逆らわないんですが」
 そうした訓練を受けているからだ。
「それでも」
「こんなことははじめてです」
「そうですね、どうしましょう」
「それだけ僕と一緒にいたいなら」
 それならとだ、沖田は。
 サリーを送る為に一緒に来ていた家族と話した、それが終わってから介護の人にあらためて言った。
「よかったらうちで」
「盲導犬でなくてもですか」
「一緒にいていいですか」
「そうですか、ではこのまま」
「はい、次の子はそのままお受けします」
 ゴンはというのだ。
「そのうえで」
「サリーをですね」
「家族に迎えます、サリーもそれでいいかな」
「ワンッ」
 主の言葉に尻尾を振って応えた、介護の人はそれを見て言った。
「彼女も是非と言っていますし」
「それでは」
「はい、これからも一緒です」
 サリー、彼女はというのだ。こうしてだった。
 サリーは施設に入らず盲導犬としてでなく普通の犬として沖田の傍に残った、そして。
「サリー行って来るよ」
「ワン」
 沖田がゴンと一緒に外出する時に必ず彼を見送り帰ると出迎えた、ゴンとも仲良く過ごし。
 彼の家で暮らした、盲導犬でなくなっても一緒にいた。そしていつも幸せそうに過ごした。愛する家族と共に。


盲導犬の抵抗   完


                  2021・6・19
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