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置き去りにされても幸せは
第一章

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                置き去りにされても幸せは
 アメリカバージニア州在住のカイラ=クリストファー黒に近いダークブラウンの髪をショートにした黒い目で長身の彼女はボランティアで生きものの保護を行っているが。
 その話を聞いて思わず顔を顰めさせた。
「よくある話だけれど」
「嫌な話ですね」
「ええ、引っ越してもね」  
 その黒く丸い目のトラ猫を見つつスタッフに応えた。
「愛情があるなら」
「置き去りにしないですね」
「そうよ、そんなことはね」
「全くです、それでこの子ですが」
 スタッフはその猫を見ながらカイラにあらためて話した。
「お腹大きいですから」
「妊娠したわね」
「そうみたいですね、置き去りにされたお家にずっといたらしくて」
「新しく入った人が見付けてこちらに連絡したのよね」
「はい、それでこの娘だけでいる間に」 
「妊娠したのね」
「前の飼い主の人達は引っ越してから結構経つそうなので」
 それでというのだ。
「どうも」
「事情はわかるわ、じゃあまずは」
 カイラはスタッフに意を決した顔で言った、今は大きな腹を守る様に横たわっている彼女を見ながら。
「子猫達を産んでもらいましょう」
「まずはそこからですね」
「後は私が何とかするわ」
 出産の後はとだ、こう言ってだった。
 そしてだ、そのうえでだった。
 まずはナコマと名付けた彼女を無事に出産させた、安静にさせてそのうえで無事に出産させた。するとだった。
 六匹の子猫達が生まれた、四匹は母親譲りのトラ毛で雄だった。二匹は白で雌だった。白猫のうち一匹は最初弱々しかったが。
 六匹共ナコマの乳を飲みすくすくと育った、そしてカイラは母子が落ち着いたところで言った。
「私が皆引き取るわ」
「カイラさんがですか」
「そうされるんですか」
「ナコマだけでなく」
「子猫達もですか」
「うちにはその余裕があるし」 
 お金も人手もというのだ。
「主人も子供達も猫好きだし」
「だからですか」
「皆引き取ってくれますか」
「そうしてですか」
「育ててくれますか」
「そうするわ」 
 強い声での言葉だった。そしてナコマに声をかけた。
「ナコマ、新しいお家に行くわよ」
「ニャア」
 ナコマは鳴いて応えた、そして。
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