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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第1話 約束は果たすとしよう
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――体は白く出来ている
――耳毛は長くて瞳は(くれない)
――幾らかの年月を超えて不老
――ただの一度も希望を与えず
――ただの一度も絶望させない
――彼の獣は常に独り
――(わざわい)の巣で、呪いを狩る
――故に、生涯を知る者はなく
――その体は、きっと獣で出来ていた



 山々の稜線を、光が走っていく。円蔵山(えんぞうざん)の山頂で朝日を浴びながら、英霊エミヤ(アーチャー)は最後の瞬間を待っていた。その体は、既に消滅の間際だ。それにも関わらず、胸の内を満たすのは安らかな満足感だ。
 その理由は、眼前に立つ自分を召還した己が元マスターである少女、遠坂(とおさか)(りん)と、そして自分たちは別人だと叫び、無様で尊い戦いの果てに自分に勝利したかつての自分(えみやしろう)のおかげだろう。

――まったく、つくづく甘い
 心底からそう思う。初心である自分殺しは達成できず、逆にその相手を救っていながらこうも心穏やかでいられる自分が。そして、二度も裏切った自分のことを今尚気に掛けてくれる凛が。これこそ、彼女曰く“心の贅肉(ぜいにく)”に他ならないだろう。
 もっとも、それがあるからこそ、自分は彼女に憧れたのだと思う。心根の甘さと、圧倒的な才能と、多大なうっかりを持つ、この赤い魔術師に。

「凛。私を頼む。知っての通り、頼りない奴だからな。君が支えてやってくれ」
 だからこそ、この時代の衛宮(えみや)士郎(しろう)を彼女に託す。彼女がいてくれるならば、彼は自分と同じ道など歩むまい。その道へ足を踏み入れても、凛がガンド1発で別方向に連れ出してくれる。
 そんなアーチャーの言葉を、凛はどう受け止めたのだろうか。暫しの間視線を外すと、涙の浮かんだ瞳のまま笑顔を作ってみせた。

「うん、わかってる。わたし、頑張るから。アンタみたいに捻くれたヤツにならないよう頑張るから。きっと、あいつが自分を好きになれるように頑張るから……!」
 自分を鼓舞するかの様な泣き笑いで、真摯な想いが口にされていく。その姿を、アーチャーは素直に美しいと感じた。誰かのために、誰かを救うために浮かべる笑顔。改めて思い出す。自分は、誰かを救う姿が綺麗だったから、この笑顔を浮かべたかったから、“正義の味方”に憧れたのだということを。

「だから、アンタも……」
 昂った感情が声を詰まらせたのか、そこで凛の言葉は途切れた。それでも、構わない。彼女の想いは、言葉を超えて伝わっている。
「答は得た」
 だからアーチャーは、その想いに応える。
「大丈夫だよ遠坂。俺も、これから頑張っていくから」
 その1つの約束とともに、アーチャーは現世を去った。その時に浮かべた笑顔が、自分の望んだ笑顔であることを願いながら。

 そして、アー
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