暁 〜小説投稿サイト〜
幻の旋律
最終話 さよならをメロディーに乗せて
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なんだろハハハハ」
「はい、静かにして!」
「俺は君らと過ごしたこの二年、とてもきつかったよ・・でも、得た物は計り知れない・・
あの入学式が浮かぶよ・・入学式のHRのとき、君らのほとんどは俺を見てなかったからな・・でもそれから、君らと時には衝突し、時には信頼しあってきた・・とにかくいろんな事があったな・・」

「ちょっと、何その内容・・まるで、卒業の言葉みたいじゃないの・・先生一体何を考えてるの・・」
生徒は騒ぎだした・・そこで幸代は言った。

「あなたたちね、まだ分からないの・・どこまで馬鹿なのよ!」
幸代は怒鳴り、生徒は皆黙った。

「深谷先生ね・・あの人ね・・昨日、ピアノを弾いたでしょ・・」
「ああ、あの最後の曲、知らない曲だったが、さすがの俺も、かなり感動した・・
あれはやばすぎるぜ・・・」
「そうよ・・でね・・あの曲のタイトル知っているの。」

幸代は、悲しげに下を向いた。そして、しばらくして震えながら口を開いた。

「あれはショパンの別れの曲よ・・あれが、先生の別れの言葉なの・・」
「・・・・・」

皆は黙った・・完全に言葉を失っていた。

「これ以上は読めないわ・・」
震えている幸代に対して、生徒は言った。
「先生・・続きを読んで下さい・・・」

「俺は、今まで長い間、数式との格闘を続けすぎたせいか人間らしい感情を失っていた。でも君らと接することで今、人間らしい感覚を得たような気がする。
秋が終わり、寒い冬が始まりかけたあの日、俺感じてしまった。俺が、悩みの種である君らに癒されていたことをな・・
それに気がついたのは遅かったがな・・・笑えるだろ?
俺は、君らにむかついたことは数多くあったが、嫌いになったことは一度もない・・
せめて、最後に出来ることは何か・・でも、もうその必要はなかったな・・
君らはもうそのときすでに、立派に共通の目標に向けて歩いていたのだ・・
最高に嬉しかったよ。
でも、もう君達と会うことはなかろう・・
しかしな、遠く離れていても俺たちには、共有しているものがある。もちろん想い出だが、でも所詮は、忘れるものだ過去のものだから・・
想い出に浸り生きて行くのは愚かなことだからな・・・
死んでしまえばなおさらだ・・・
それは、時間だ・・
俺達は時間と共有している・・
もちろんこれからも・・永遠にな・・
俺は、それだけで十分だ・・」

皆は、悲しみの底に落ちて行った・・・・・

「一体このクラスの中で何人が自分の使命に気がつくのだろうか・・
それを見つけるために、どうか探究して欲しいものだ・・
人生は、楽しいばかりではないけどな・・
しかし、決して無理をせず、自分らしい旋律をつくってくれ・・
最後に、ありがとう・・
そして、さよなら・・
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