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幻の旋律
最終話 さよならをメロディーに乗せて
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んな不吉な時代だからこそこのような心が大切であるのではないでしょうか。どうか、今日のこの合唱コンクールの余韻がいつまでの皆様の心の中に残りますように・・・」

美容師の緊張は極限状態に達した。
「このお客さん・・一体今どんな心境なのか・・
大失恋でもしたのか?・・・
ニキータだと!
一体どこまで短くすればいい・・!
でも、なんて魅力的な女性なんだ・・
俺は、美容師の指命として、
完成後に、この女性を幸せな気分にさせなければならないのだ!」

「ねえ・・美容師さん!そんなに怖い顔で切らないでよ・・肩の力を抜いてよねハハハ」
女は微笑んだ。その笑顔で、緊張感がほぐれ始めた。
「御客様!だって、ニキータですよ・・格好良く切りますよ。覚悟して下さいね!」

賢治は、会場裏口へと歩いて行った。
「俺にはこんな物、必要ないよな・・・なあ幸代・・・」
賢治は、ごみ箱に携帯電話と拳銃を捨て車に乗った。

「ありがとな・・あとは頼む・・
もう、この街に未練はない・・」

木村警部は、賢治を追った。やがて、ごみ箱の拳銃を発見した。
「安心したぜ・・二人に対しての殺意はないよな。兄貴・・・」
すぐさま刑務所に連絡した。
「滝沢を逮捕した!深谷賢治も殺意はないぜ!安心しろ!直ちに麓刑務所の厳戒態勢を暖和しろ!」
電話を切り、まるで緊張が解けたかのように爽やかな顔で空を見上げた。

「兄貴、一体何処へ・・まさか、この街を出たのか?そんな必要はないのに・・
安心してこの街にいて、兄弟仲良くつるもうぜ・・またいろんな闇の情報を提供してくれよな!そして今度は、警視でもなるぜハハハハハ」

美容師は、最後の一切りを終え鏡を見た。女も自分に見とれていた。
「これが、私なの・・」
「はい・・ニキータ様!終了でございます!」
「なかなかいいわね・・」
女は微笑み席を立ち、黒のロングトレンチコートをはおり襟を立てた。
「至急会計してちょうだい・・」
「はい!9987円になります・・壱万円札からですね・・」
女は無言のまま、ゆっくりとサングラスをかけた。
「では、お釣りです・・」
美容師は、お釣りを握り渡そうとした。
「そんな、不吉なお釣りはいらないわ・・」
女の姿を見て一瞬恐怖を感じた。
「はい!・・分かりました!またお待ちしています・・」
「何だか、気分が変わってすっきりしたわ・・」
微笑み、背を向け店を出て行った。
美容師は女の口元だけを見て感じた。
「とてつもない悲しい微笑みだ・・でもなんて魅力的な女性なんだ・・」
思わず握っていた手を広げた。そこには、十三円があった。

賢治は三池港に車を乗り捨て、三池港インターに徒歩で入った。
数多くの車が通行している有明沿岸道路を運転手らは賢治を見ない人
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