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幻の旋律
最終話 さよならをメロディーに乗せて
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に行けるぜ・・
なあ滝沢・・そろそろ時間だ・・
賢治・・後は頼んだぜ・・・」

「おい・・・お前!ひょっとして・・」
木村警部は銃を向けた。
「滝沢なのか・・どうした・・大丈夫か・・・よしお前を連行する・・」
「なあ・・刑事さんよ最後のお願いがある・・」
「何だ・・言ってみろ・・・」
「もう少しここにいさせてくれ・・この曲が終わるまでな・・」
「それもそうだな・・・・」

このとき、賢治退職を知っている教員の多数は悲しい表情をしていた。
「先生達なんで泣いているのだろう・・・この曲聞いたことないけど・・
すごく激しくも、穏やかでとても悲しい曲だね。何だか泣きたくなる気分・・」
賢治の演奏は、皆を悲しみの底に突き落とした。
職員なりに、この曲を最後に弾いた理由を理解している。明日の終業式が、賢治の最後日だったからである。

「そうなのね・・私は、あなたの一番そばにいて理解してきたつもりだわ・・・
でも、あなたが背負っているものとは何なの・・・
私が赴任した二年前、すでにあの頃から・・
私達は住む世界が違っていたのかもね・・・
でも・・ただひとつ分かることは・・
あなたが、なぜこの曲を選んだかよ・・
あなたは、私から・・いやこの街からも離れて行くのね・・」
幸代は、深いため息と同時に目を閉じた。

やがて最終小節、最後はピアニッシモ、だんだん弱くやがて無に収束する・・

演奏を終え、皆に深く一礼し、ほほ笑んで退場した。

「なあ滝沢・・
何故、引き金を引かなかった・・」

「ええ・・最後に・・」
幸代は挨拶した。

「今日、この合唱コンクールが素晴らしいものとなり主催者である私もこれ以上幸せなことはありません・・音楽教員である私は、ただ上手にピアノを弾くことしか考えていませんでした。すなわち私の音楽は自己満足にすぎなかったのです。
でもあるとき教わりました。音楽は人に語りかけるように演奏すべきだ、すなわち言葉と同じなんです。私は今、そんな音楽を目指しています。今日この会場の皆様は、皆共有しました。もちろん時間に乗せたメロデーを通じてです。人間は集団化すると、そこには、争いや嫉妬が存在するものですが、これは人間である以上仕方のない事かもしれません・・こんな時代のせいでしょうか?この街だって、以前に大量の麻薬が流出し多くの若者達が今でもその後遺症で苦しんでいます。治安が悪く、争事が絶えない悲しい街になりかけています・・でもせめて、今日みたいな場面で一つになれた事は大変素晴らしい事です。私は、ただの音楽教員ですが。ここ大牟田が争い事もなく平和な街であことを願って演奏を続けて行くつもりです。最後に私は、

野に咲く一輪の花が美しい・・・

と思えるような、情緒を大切にしたいと思います。こ
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