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幻の旋律
最終話 さよならをメロディーに乗せて
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、店内ではあるピアノ曲が流れ始めた。

「この曲は・・・なんて美しいの・・」
「そうですね・・この曲は・・
ショパンの別れの曲ですね・・」

女の瞳は濡れていた。
美容師の手が止まり、鏡に映っている女に見とれてしまった。

「滝沢、最後の曲だ!もう少し待ってくれ・・お願いだ・・
俺は今、あの頃と違って一人ではないんだ・・・この会場にいるみんながいるんだ・・
そうだったな、お前は・・
今でも孤独なんだよな・・
佐々木にも操られてな・・
俺を銃口で狙ってるだろ?・・
引きたいんだろ・・その引き金をな・・
だが俺は、このピアノを弾くぜ・・
この曲はな・・
俺なりの、サヨナラなんだよ・・」

そして演奏は始まった。穏やかな始まりである。最初の和音から第一小節で・・

「この曲は・・なんと寂しく美しいのだ・・確かショパンのあの名曲・・
藝術の世界にも足を踏み入れたのか・・」
木村警部の足が止まった。

「なんという美しい旋律なの、すごく繊細な音ね・・」
幸代は感激していた。

「ガチャ・・」
滝沢は安全装置を解除し、賢治をスコープで狙った。
「ハハハハ伊能賢治よ・・」
「チェック・メイトだせ!・・・」
引き金に手をかけた。

このとき調が変わり、激しさが増していった。

「フョルテッシモね。激情する苦しみの表現ね。見事だわ・・何だか悲しみに落ちていく、いや、絶望、怒りか、・・」

「何だこのメロデーは・・調子狂うぜ・・」
滝沢はスコープで狙撃しておいたが、そのメロデーが滝沢の聴覚系を刺激していた。
そのときだった。

「よう、滝沢・・」
闇の彼方から声がする気がした。
「え・・お前誰だ!」
あたりを見回したが誰もいない。
「もしかして・・死んだはずの・・」
しかし確かに声がする・・
「幽霊なのか!確かに聞こえるだが何処だ・・」
「滝沢・・このメロデーを聴いて何も感じないのか・・
心が洗われるだろ・・」
「え!なぜだ・・お前を殺したはずなのに・・やめてくれ!」
「おい・・お前は殺す相手を間違っているぞ・・
あの、橋げた落下事故は、佐々木が仕組んだんだ・・・」
「・・・・・・」

しばらく、滝沢は目を閉じてもがいていたが・・
滝沢は、銃を下し膝待ついた・・

「俺は、お前ら三人を殺すことが親父への供養と・・
それが使命だと信じて、今まで生きて来た・・」
「ところで、なんてメロデーだ・・・何だか、心が洗われるぜ・・・」
滝沢はほほ笑んだ・・

やがてメロデーは再び穏やかなになっていった。
賢治と過ごした時間を振り返った。幸代は直感した。

「まさか!・・・」

「賢治、幸代お前らは全く素晴らしいコンビだ!
これで安心して、俺達は、地獄
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