暁 〜小説投稿サイト〜
幻の旋律
第九話 加速する臨場
[5/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

自分自身のやりかたで、莫大な何かのエネルギーに変えることが可能なんだ!」
「何だか、良く分からないわ・・でもその言葉忘れないわ!おじさんも元気でね・・・」

賢治は、幸代の話を何気なく聴いていたらやがて興奮し
「え!そのおじさんが巨大鉄橋の現場監督だと!」
賢治は、グラスのウィスキーを飲みほした。何だか落ち着かない様子である。
「どうしたの?」
「いや・・話の続きを・・早く聴かせてくれ・・」

「その後、私は、その後母を失い、でも東京の音大に進学したの・・出発の前日に、何だかそのおじさんが気になって、土木作業事務所を訪れたの・・おじさんはその時いなかったわ・・そうしたら、そこには、壁にはある絵が掲げてあった・・」
「絵・・・」

「私の母が描いていたはずのね・・
二人の男が砂浜を歩いている・・」
賢治は、そっと目を閉じた、そこはもちろん暗闇で、想い出の渦の中に、自分自身が螺旋状に落ちてゆくのをただ感じたのだった・・・・

「今日も早退してその現場に行って来たわ・・その絵を見にね・・母の有一の形見なのでも、もうそこには事務所すら存在しなかったの・・」

「ねえ・・何寝てんのよ・・私の話きいてるのよ!」
賢治は目を開いた。
「ああ・・しっかり聴いたよ・・良く分かったよ・・・」
「ところで、ベルヌーイの定理ってそんなにすごい定理なの?」
「いや・・・そんな定理知らないな・・」
賢治は無表情に答えた。
「今夜は冷たいのね!」
幸代は不機嫌になった。
二人はしばらく黙っていた。そして、賢治は空いたグラスの中の氷を見つめながら口を開いた。

「なあ幸代・・」
「何よ!」

「この世の中には、偶然なんて存在しない・・
自然現象だってそうだ・・
もし、それらの現象が、すべて偶然であると仮定するのであれば・・
我々、科学者の仕事が無くなってしまう・・
それでは退屈なのだ・・
だから、俺は、どんな出来事であろうと、それを必然と考える・・
それには何かの理由があるとな・・
人生は必然の連続だ・・
きっと、そこにも何かの法則が存在するのだ・・
俺達が今、この場所にいるのも・・」

賢治は次の瞬間、幸代を見た。

「そう、必然なのかもしれない・・
いや、それどころか・・」

「何言ってるの、酔っぱらってるんじゃないわよ!」
もう帰りましょ・・」

「俺はまだ飲んでるよ・・一人で帰ってくれ・・」

「はいはい・・私を送ってくれないのね・・さよなら・・」
幸代は、扉に向かって歩き始めた・・
「今夜は、あんたのおごりだからね!」
幸代は扉の前で足を止め振り返った。
「・・・・・・・」
その懐かしその言葉に賢治は、ほほ笑みながらうなずいた。
「ねえ!マスター!タクシー呼んでよ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ